前年度に開発した超音波ドライホブ加工装置について,安定性の向上および最適加工条件の選定を行った.本加工装置は開発当初,工具を20kHzの超音波域で振動させていたが,工具振動を一定の状態に保つことが難しく,更に工具と振動ホーンの接触部が摩耗する問題が発生していた.今年度は工具支持軸と工具間のはめ合いの変更および皿ばねの設置方法の変更等を行い,安定した加工が可能な装置に改良した.これにより,これまで困難であった工具振動数および工具振幅の細かい変更が可能となり,最適加工条件を実験により検討することができた.開発した装置は「振動歯切り装置」と名称を変更し,論文掲載された.本装置は(公財)工作機械技術振興財団・工作機械技術振興賞(奨励賞)受賞および雑誌「機械技術」誌への掲載決定など注目されており,本内容による招待講演も2回行うことができた.本装置は,本研究の主たる目的である「高周波焼入れ処理後の材料に対しドライホブを行うという新しい歯車加工方法の提案」を高いレベルで具現化したものであり,硬度HRC50~55に硬く焼入れした材料を,加工熱を抑制しながら精密に歯車加工することが可能である.以上から,本研究の目指す「ドライ加工による高品質歯車の大量生産」に向け,大きく前進したものと考えられる. また,振動歯切り加工のメカニズムを解明するために行っていた振動切削モデル解析では,びびり現象が発生する原因とみられる切りくず流出速度の切り替わりパターンの変化を確認した.これは振動加工の安定化に大きく寄与する結果と考えられる.更に,歯車対の衝突を模擬したバウンシングボール系の解析では,ボールに与える振動数の変化によりボールの最大変位が階段状に変化する傾向を確認した.これは歯車系の歯打ち音の発生に関連した現象と考えられる.
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