近年,地下水の硝酸汚染が問題となっている。その要因の一つとして茶畑への過剰施肥があげられいるが,現在のところ有効な対策はほとんどない。そのため,本研究では,陰イオン交換樹脂を茶畑土壌に埋設することにより,硝酸イオンを吸着し,その後脱窒する技術を開発することにより地下水の硝酸汚染防止を図ることを目的に検討した。 4種類の陰イオン交換樹脂を用い,吸着試験を行ったところ,高濃度の硫酸存在下で最も硝酸イオンを吸着した陰イオン交換樹脂を選択した。選択した陰イオン交換樹脂を用い,土壌カラム試験を行った。その結果,土壌に埋設しても硝酸イオンを吸着することが可能であることを確認した。 陰イオン交換樹脂に吸着した硝酸イオンが脱窒可能であるか確認するため,陰イオン交換樹脂で硝酸イオンを除去した土壌抽出水に硝酸イオンを吸着した陰イオン交換樹脂を加え,窒素ガスで脱気し,アセチレンを加え,一定期間30℃で保存後,亜酸化窒素を測定した(アセチレン阻害法)。その結果,亜酸化窒素が検出され,陰イオン交換樹脂に吸着した硝酸イオンの脱窒が確認された。しかし,亜酸化窒素の発生量は少なく,陰イオン交換樹脂に吸着した硝酸イオンの極一部が脱窒に利用されたと算出された。これは,土壌抽出水には脱窒に必要な有機物が不足しているためと考えられた。よって,有機物としてグルコースを加え,同様の試験を行ったところ,グルコースの添加量の増加に伴い,亜酸化窒素の発生量が増加した。このことから,脱窒効率を向上させるため,有機物の添加等が必要であることがわかった。
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