研究課題/領域番号 |
25340084
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
原田 直樹 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50452066)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ジフェニルアルシン酸 / 嫌気的微生物変換 / 硫酸還元菌 / チオ化 |
研究実績の概要 |
ジフェニルアルシン酸(DPAA)等のフェニルヒ素化合物は、嫌気的な土壌条件では脱フェニルやメチル化を受けることが知られていた。しかし我々の最近の研究で、十分な硫酸根と易分解性有機物が存在する場合には比較的毒性が高いとされるチオ化物に主に変換されることが示された。DPAAがチオ化されると、ジフェニルチオアルシン酸(DPTA)が生成する。この変換は、硫酸還元菌による硫化水素(H2S)の生成とその後のカルボニル基のチオキシ基への二次的変換による反応と考えられることから、H2S存在下ではDPAA以外のフェニルヒ素化合物についても同様にチオ化が起こるものと思われた。そこで平成26年度はこれを確認するため、フェニルメチルアルシン酸(PMAA)、ジフェニルメチルアルシンオキシド(DPMAO)、ジメチルフェニルアルシンオキシド(DMPAO)及びフェニルアルソン酸(PAA)を対象に、H2Sと反応させて得た反応生成物について機器分析化学的な検討を行った。 LC/ICP-MSによるヒ素の形態分析の結果、PMAA、DPMAO及びDMPAOとH2Sとの反応生成物としてそれぞれ未知ヒ素種U1、U2及び U3が検出された。LC/TOF-MSを用いた高分解能マススペクトル解析の結果、U1はC7H9AsOSと構造推定されたことから、フェニルメチルチオアルシン酸が生成したものと判断された。同時にジチオ化物であるフェニルメチルジチオアルシン酸の生成も示唆された。同様にU2及びU3はC13H13AsS及びC8H11AsSと構造推定され、それぞれジフェニルメチルチオアルシン、ジメチルフェニルチオアルシンと考えられた。その一方で、PAAの反応液からはチオ化物と思われる未知ヒ素ピークは検出できなかった。 以上のことから、PAAを除くフェニルヒ素化合物はH2Sと容易に反応してチオ化物を生成することが示された。また、反応後の元化合物とチオ化物のピーク強度の比較から、PMAAはDPMAOやDMPAOに比べてチオ化が起こりにくい性質をもつものと推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はジフェニルアルシン酸に加えて、フェニルメチルアルシン酸、ジフェニルメチルアルシンオキシド及びジメチルフェニルアルシンオキシドからもチオ化物が生成することを示した。当初の計画通りの進捗状況である。加えて、チオ化フェニルヒ素化合物の植物(イネ)への移行について予備的な検討を実施した。 以上のことから本研究は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度は、チオ化フェニルヒ素化合物の植物(イネ)への移行と根圏における動態の解明をポット実験で明らかにする計画である。
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