研究課題/領域番号 |
25340085
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
平田 健正 和歌山大学, 学内共同利用施設等, 理事 (30093454)
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研究分担者 |
江種 伸之 和歌山大学, システム工学部, 教授 (00283961)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水工水理学 / 地盤工学 / 環境技術 / 土壌地下水汚染 / グリーンレメディエーション |
研究概要 |
平成25年度には,揮発性有機化合物および有機ヒ素化合物で地下水が汚染された現場を対象に,数値シミュレーションを実施して汚染物質の動態を明らかにするモデルを構築した.また,2か所の現場で実施されているバイオレメディエーションに注目し,現場に固有な微生物を利用したバイオスティミュレーションによる揮発性有機化合物の分解促進効果を,構築した数値シミュレーションモデルにより評価した.ここでは,多種類の揮発性有機化合物で汚染されている地下水中においても,適切な薬剤の注入により自然減衰の10倍から100倍近い分解促進効果が得られることが明らかになった.加えて,汚染物質の中には嫌気条件下での分解が難しいと言われているベンゼンも含まれていたが,本現場においては約10倍の分解促進効果が得られた. 続いて,この数値解析で得られた分解促進効果を使ってバイオレメディエーションによる浄化期間を予測した.また,同じ現場で実施されていた揚水処理とバイオレメディエーションを併用した方法および揚水処理単独処理による浄化期間も近似式などを使って予測した.今後は予測された浄化期間を利用して各対策工の環境負荷の算定などを行っていく予定である. そこで,その準備として,浄化技術の環境影響を評価するモデルの検討も行った.グリーンレメディエーションという環境に優しい汚染浄化の概念が提案されている.このグリーンレメディエーションでは,大気,水,エネルギー,資源,生態系の5項目に対して,環境負荷を最小限にする工法を選択することが求められるが,今回は環境負荷項目としてCO2に着目し,(一社)土壌環境センターが提案している算定方法(COCARA)をベースに,現場に適したモデルへの改良を行った.次年度からは,このモデルを使って,バイオレメディエーション,揚水処理,および両者併用技術の環境負荷特性について検討を行っていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
複数の現場から観測データが得られ,実現場におけるバイオレメディエーションの分解促進効果や浄化期間の評価を実施できた.これにより,土壌地下水汚染対策の全期間(調査,対策,事後モニタリング)の環境負荷を算定できる準備が整った.また,環境負荷を算定するモデルについても,既存モデルを改良することで利用できることがわかり,改良作業も順調に進んでいる.したがって,次年度からは,実現場のデータを利用した土壌地下水汚染浄化対策の環境負荷の分析に速やかに取りかかることができる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,前年度に実施したデータ解析結果を利用して以下の内容を進める. (1)数値解析技術は汚染状態の将来予測のみならず,複数の対策技術を対象に汚染物質挙動の動的感度分析を実行し,適切な対策技術の選定や組合せによって対策効果を最大化できるところに大きなメリットがある.そこで,本研究の目標とする環境への負荷排出量について,選定する技術と汚染物質の除去量や汚染の規模に基づき,数値シミュレーションモデルの計算結果を確認しながら,現場で施す対策技術を見極める方法を検討する. (2)汚染物質が地下水に到達後,地下水流れに乗って汚染プルームは次第に拡散していく.この様子を可視化することは浄化対策の計画や実施に有用となるため,ディジタル地図や地理情報システム上に展開し,地下水中における汚染物質の時空間変動を可視化する.さらに地下水揚水など浄化対策に伴う汚染プルームの消長を数値情報として整理し,物理的,化学的,生物学的対策の地下水汚染浄化に及ぼす影響を定量的に把握する. (3)平成25年度に検討し構築した観光負荷を算定・評価するモデルを用いて,バイオレメディエーション,揚水処理,および両者併用技術の環境負荷特性の評価を行う. (4)なお,申請書に記載した2年目の内容は,数値シミュレーション技術の高度化が中心であったが,これについては1年目の平成25年度にほぼ終えることができたので,当初は3年目に予定していた環境負荷特性の評価を平成26年度から実施することにした.これにより,グリーン・レメディエーション概念を導入した土壌地下水汚染対策を促進するための手法についてより充実した成果が得られることが期待される.
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次年度の研究費の使用計画 |
必要物品を購入する中で端数として6円が残った. 次年度に予定している物品費に含めて使用する.
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