研究課題/領域番号 |
25340086
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
森村 茂 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (20230146)
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研究分担者 |
川越 保徳 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (00291211)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 硫黄酸化細菌 / 脱窒菌 / 元素循環 / 干潟底泥環境 / 単離 |
研究実績の概要 |
平成25年度に引き続いて、干潟本来の環境が保全されていると判断した泥質である緑川河口干潟の表層5 cmの底泥中に生息する硫黄酸化細菌および脱窒菌の単離を行った。今年度は特に、環境悪化に比例して生成する硫化水素の除去に関係する硫黄酸化細菌の単離を中心に行った。 緑川河口干潟底泥サンプルを均一に混合してから1 g測り取り、炭素源は炭酸水素ナトリウム、硫黄源はチオ硫酸ナトリウムを含む硫黄酸化細菌用液体培地100 mlに接種し、室温で振とう培養(好気培養)を行った。培地中にpH指示薬を添加することで、微生物の増殖により起こる培地のpH変化を確認しながら、硫黄酸化細菌の集積培養と単離を行った。また、単離株の16S rRNA遺伝子およびaprA遺伝子を標的としたコロニーPCRを行い、塩基配列を解析した。本条件で単離した株は従属栄養型の増殖を示す硫黄酸化細菌であり、有機物の存在下で還元型の硫黄化合物を酸化する能力を有することを確認した。また、16S rRNA遺伝子の部分塩基配列から単離株の同定を行った結果、好気性の硫黄酸化細菌であるParacoccus, Bacillus, Dyella, Pseudomonas 属に近縁であることがわかった。また、MPN法を用いて底泥中の菌数を測定した結果、単離株の緑川河口干潟表層5 cmにおける菌体濃度は高く、硫黄酸化細菌の中で菌数比率として主要な硫黄酸化細菌であると考えられた。 一方、脱窒菌の単離に関しては、集積培養を行う前は目的とするAzoarcus属の脱窒素菌が検出されるが、集積培養を行うと、使用した炭素源の種類に関係なくAzoarcus属以外の脱窒菌が単離された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硫黄循環のうち、干潟底泥において硫黄酸化に関与する微生物に関しては予想以上に多様な微生物が関与していることがわかり、その中でも従属栄養型の硫黄酸化細菌が菌数比率として優位であることを明らかにすることができた。これは当初予想していなかった結果であり、硫黄酸化細菌の単離に関しては、当初の予想以上に研究が進展したと判断している。 一方で脱窒菌の単離に関しては、異なる炭素源を用いて集積培養を行った場合の炭素源の影響が予想していたよりも小さく、微生物群集構造解析で検出された多様と予想された脱窒菌のうち、Pseudomonasを中心とした特定の微生物だけが単離され、やや遅れていると判断している。 以上の結果から、全体としてはおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
硫黄循環に関する研究では、独立栄養型の硫黄酸化細菌の単離を試みる。今年度の研究成果として、独立栄養型硫黄酸化細菌の菌数比率が従属栄養型硫黄酸化細菌よりも小さいことから、炭素源を重炭酸イオンに限定した発酵槽を用いた連続培養により集積を図った後、単離を行う計画である。 窒素循環に関する研究では、増殖速度が大きい脱窒菌が優先的に集積されている可能性が示唆されたので、培養時間などの培養条件を変化させた集積培養を行うことで、多様な脱窒菌の単離を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた脱窒菌の単離が予定通りに進まず、単離株の評価や16S rRNA遺伝子およびnirS遺伝子の解析に予定していた予算の支出額が少なくなったため、当該助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究計画に記載したように、脱窒菌の集積培養条件を当初計画よりも多様化し、多種類の脱窒菌が得られるように改善することで、平成26年度に達成できなかった評価・解析を平成27年度に実施し、当該助成金を使用する。
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