研究課題/領域番号 |
25340089
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石川 百合子 独立行政法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (30303001)
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研究分担者 |
村尾 智 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 主任研究員 (10358145)
世良 耕一郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00230855)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有害元素 / アジア / 国際環境協力 / 国際情報交換 / タイ / 河川環境管理 / シミュレーションモデル / PIXE分析 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、研究対象としたタイ王国カンチャナブリ地方の地形に関する詳細な解析を進めた。研究地域であるソントー鉱山周辺では、石灰岩が広く分布し、カルスト地形が形成されており、河川水が急に地下へ落下し、その地点で河川が消滅するシンクホールも随所で報告されている。地形図からは地表水の流れる方向を容易に読み取れなかったため、タイ鉱物資源局のデジタル情報担当者と共同で地形図の解析を行った。その結果、対象地域の主な河川や沢について、水流をおおむね把握することができ、集水域もほぼ推定できた。 さらに、鉱山が環境に与える影響について、研究地域に隣接するクリティクリーク(Kliti Creek)地区の鉛汚染史をもとに汚染の経緯を調査した。1990年代に同地区で発生した深刻な鉛の汚染と健康被害は、カンチャナブリ県内の鉛鉱山がすべて休止するきっかけとなったものである。タイ政府が保有する資料を含め、当時の事故の記録等を調査した結果、この地区の汚染は尾鉱の急激な放出と鉛を含む懸濁物の浮遊によるものであること、過去に2回鉛濃度が急激に増加したこと、水-岩石相互作用が徐々に進むソントー地区とは性質が異なることが判明した。鉛汚染が過去1度のみではないため、今後、cumulative impact analysisを進める必要があるが、今回のシミュレーションに事故の情報を反映させる必要はないとの結論を得た。以上の研究成果は、第24回環境地質学シンポジウムにおいて、タイ鉱物資源局と共同で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、フィールド調査とPIXE分析を行い、重金属の存在形態や汚染の程度を明らかにした。その成果は、学会で公表し、国際誌に投稿した。平成26年度は、前年の成果を踏まえて、必要な情報をさらに取得し、最終的なシミュレーションに入る準備をほぼ終えた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、カルスト地形における河川水のシミュレーションへ向けて、AIST-SHANELの適用可能性を検討する。これまでに得られた地形情報、水質情報、地形解析結果を用いて、現行のソフトウェアでシミュレーションを試行し、計算を阻害する点やソフトウェアの改良点を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでのフィールド調査および地形情報や水質情報に基づき、本研究の対象地域の水流や集水域を特定することに相当以上の時間と労力を要した。そのため、最終的なシミュレーション作業を次年度に行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度得られた対象地域の地形や水質等の情報をもとにシミュレーションを実施し、設定したデータや解析結果の妥当性を確認する。その結果に基づき、鉱山からの重金属汚染のシナリオ解析を行う。
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