研究課題/領域番号 |
25340093
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中里 勉 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (30323330)
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研究分担者 |
袋布 昌幹 富山高等専門学校, その他部局等, 教授(Professor) (50270244)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロピレン / プロパン酸化脱水素 / 不均一触媒 / 水酸アパタイト / リン資源回収 |
研究概要 |
本研究の目的は,余剰汚泥の資源化と熱処理操作の最適化により,プロパンからプロピレンを得る触媒を開発することである。本研究では,触媒母材として水酸アパタイトを採用している。水酸アパタイトの合成にはカルシウムとリンが必要であり,リン源には余剰汚泥からの抽出物を活用する。現在リン資源は世界的に枯渇の危機にあるほか,我が国では全量輸入に頼っているのが現状である。本研究では,国内の未利用リン資源として廃棄物(余剰汚泥)に着目し,触媒用途として活用することにより,新しいリン資源リサイクルモデルを構築することを提案している。 今年度は,研究代表者において,反応装置の作製を行い,各種の予備試験・機器調整を経て運転手法ならびにガス分析手法を確立した。これにより各種操作条件においてプロピレンの合成試験を行える実験系が整った。触媒の合成にあたってはまず試薬を用いた検討から開始し,従来の液相沈殿法により水酸アパタイトを合成し,その結晶性が及ぼす触媒活性への影響,ならびに報告例のある鉄分含有の影響を調査した。現在,触媒活性に影響する因子について,合成条件の検討も踏まえて更に調査中である。 また,研究分担者において,アルミニウムイオンの反応性を用いた未利用リン資源回収と回収物の機能性評価について検討した。その結果,未利用リン資源である下水汚泥を炭化して得られた炭化汚泥,下水汚泥を焼却処理した焼却灰とも,酸でリン酸および鉄イオンを抽出後,鉄含有水酸アパタイトを合成した。得られた鉄含有アパタイトのフッ素吸着特性を調べた結果,試薬系で合成した鉄を含有しないアパタイトと同様の吸着特性を示した。 今年度に得られた成果の一部(研究分担者分)は国内の学会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は,触媒活性評価装置の立ち上げとガス分析方法の確立を早期に実現して本研究を進める予定であったが,不具合箇所の発見と調整,ガス分析用条件出しに相当な時間を要したため,計画はやや遅れている。また,触媒合成方法の理解を深めていくために,水酸アパタイトを用いた他の反応系の触媒に関する文献調査を行ったものの,本格的な検討には至っておらず,最も本研究に関連のある文献で報告されている触媒合成条件を採用してまずは触媒を合成することとした。 本研究では当初,以下の2つの研究課題を挙げていた。 (1)水酸アパタイトの結晶性,微細構造が及ぼす触媒活性への影響 (2)未利用リンを用いた触媒原料の出発形態の違いと触媒活性との関係 上記の理由により研究の進捗が遅れていることから,(1)については一部未検討,(2)についてはそのほとんどが未検討のままである。特に(1)では,触媒の微細構造の分析に着手できていない。(2)では比較対象となる試薬出発のもののみ,触媒活性の検討を行えた状況である。全体として,当初の計画のおおよそ4割程度の実施で今年度を終えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記に示した今年度の当初の2つの研究課題(1),(2)のうち,今年度中に検討できなかった分について,まず検討を進める。すなわち,(1)については水酸アパタイトの微細構造が及ぼす触媒活性への影響の調査,(2)については未利用リンを用いて合成した触媒の活性評価を行う。この検討の後,次のステップとして熱処理操作の最適化についての検討を進めていく。特に,鉄含有水酸アパタイトの化学形態と微細構造について,合成時ないしは合成後の熱処理操作に焦点を当てながら,熱処理条件が及ぼす触媒活性への影響を調査する予定である。 また未利用リン資源の再利用を想定し,触媒合成時の混入微量金属として鉄以外の金属成分についても今後はその共存効果等を確認していく必要がある。このように検討しなければならない項目が多岐に渡るため,早い段階で触媒活性向上の期待できない因子を特定して研究を効率よく進めていく必要があると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
人件費・謝金として当初80,000円を計上していたが,今年度は使用しなかった。そのため,人件費・謝金相当額分の76,561円が残る結果となった。 少額のため,次年度の物品費あるいは旅費へ計上する予定である。
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