本研究の目的は,余剰汚泥の資源化と熱処理操作の最適化により,プロパンからプロピレンを得る触媒を開発することである。本研究では,触媒母材として水酸アパタイトを採用している。水酸アパタイトの合成にはカルシウムとリンが必要であり,リン源には余剰汚泥からの抽出物を活用する。本研究では,国内の未利用リン資源として廃棄物(余剰汚泥)に着目し,触媒用途として活用するための条件の検討を行う。 最終年度は,研究代表者において,余剰汚泥の活用を想定した鉄を微量含む水酸アパタイト触媒の合成とその触媒活性について,その合成方法や鉄含有の手順,鉄含有量,熱処理温度,熱処理雰囲気,熱処理方法を変えて調査した。熱処理方法については電気炉のほか,一部の条件では流動層滴下熱処理についても検討した。 550℃における触媒活性(プロピレン収率)を比較した結果,鉄含有量の最適値は0.5~1.5%の範囲にあり,触媒合成条件に依存するものの余剰汚泥のリンを活用する際に混入する鉄分に相当することが分かった。プロピレン収率は触媒の熱処理温度や熱処理雰囲気,熱処理方法に影響し,還元性雰囲気での熱処理は酸化雰囲気に比べより触媒活性が高くなる傾向が示された。本研究では,実施期間内において電気炉熱処理を上回る流動層滴下熱処理の条件の特定には至らなかった。合成した鉄含有水酸アパタイト触媒のプロピレン収率は最大4.7%であった。
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