本研究は、菌体外Mn(II)酸化酵素によってバイオMn酸化物(Biogenic Manganese Oxide; BMO)を産生するMn(II)酸化真菌Acremonium strictum KR21-2を用いて、多種類の重金属イオンに適応可能な除去・回収システムの開発を目的とした。KR21-2をMn(II)イオンを含むHAY培地で前培養して回収したBMOには、Mn(II)酸化酵素が安定的に保持され、これを用いることでMn(II)イオンのみを含むHEPES緩衝溶液中でMn(II)酸化反応が連続的に進行するが明らかとなっている。1 mMを含むHEPES溶液に活性BMOを加えると、溶存酸素存在下、添加したMn(II)イオンは溶液中から除去され、酸化物態に変換され、希土類元素イオンやBa(II)イオン、一部のオキソ酸型イオンが高い効率で回収できることが示された。加熱処理で酵素活性を失活させた場合や溶存酸素を除いた系では、Mn酸化物の追加形成は認められず、重金属イオンの除去量も大幅に減少した。希土類イオンであるCe(III)を添加した場合には、Ce(IV)O2が形成することがX線結晶回析で明らかとなり、BMOによる連続的な回収が可能であることが示された。
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