研究課題/領域番号 |
25340097
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山野 尚子 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (20358279)
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研究分担者 |
中山 敦好 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (10357676)
川崎 典起 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (70344158)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生分解性ポリマー / ポリアミド / 生分解性制御 / 疎水性 |
研究実績の概要 |
3年計画の2年目として、ポリアミド4(PA4)およびポリカプロラクトン(PCL)に関する実験を行った。 PA4:末端にステアロイル基を持つPA4 (C18PA4)を合成し、このC18PA4とパラホルムアルデヒドを反応させ、メチロール化を行った。パラホルムアルデヒド量を変えることによりメチロール化度の異なるポリマーを合成した。PA4の末端にステアロイル基を導入すると生分解が抑制されたが、生分解抑制効果があるメチロール基を導入すると、その導入率に応じて親水性が増し、逆に生分解が促進されるという結果が得られた。しかしメチロール基の導入率がさらに上がると、生分解は抑制された。同様の結果がベンゾイル基を導入したPA4(BPA4)でも得られた。 PCL:分子量の異なる二種類のPCLを用い、ステアロイルクロリドをクロロホルム中で反応させ、C18PCLを合成し、末端への導入率はNMRで確認した。PA4の場合はステアロイル基の導入率はほぼ100%であるのに対し、PCLでは導入率は反応条件に依存し10-60% 程度であり、その導入率に応じてポリマーの酵素加水分解が抑制された。C18PCLの物性試験を行った結果、引張強度は元のPCLと変わらず、強度への影響は無かった。疎水性であるステアロイル基を持つPCLでは生分解が抑制されるという結果を得たため、親水性であるPEGを付加したPCLを作成しその影響を検討した。PEGを付加すると分子量が異なる両方のPCLでリパーゼによる酵素分解が抑制された。接触角を測定した結果、PEG付加により疎水性はほぼ変わらないかやや親水性になり、疎水性の性質に関わらずに生分解を抑制されたポリマーを作成することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね目標通りの進捗状況であり、ポリアミド4に関しては、生分解性抑制に関する複数の因子を含むポリマーを合成し、それらの効果の影響を確認した。タンパク質の吸着は酵素を用い、その酵素活性を指標として吸着を評価した。QCMでの評価については引き続き、条件を検討している。PCLについては導入率と疎水性と酵素分解性について相関を持つ一方、疎水性ではない官能基を導入したポリマーでも生分解抑制効果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
QCMでの吸着の評価については、電極上の表面積を大きくすることで測定が可能であるか検討を行っており、次年度も引き続き検討する。タンパク質吸着の他の評価法として、ポリマー上に吸着した酵素をその活性で評価することを検討する。ステアロイル基のPCLでの分解抑制効果について、環境試験でPA4と異なる結果が得られており、追加試験や異なる条件での試験を行い、その差異を検証する。私たちはPA4が生体内で生分解することを見出しており、研究期間内に可能であれば生体内での分解抑制効果の有無も確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
種々のポリマーを合成し分析する実験計画であるが、実験の進捗上、ポリマー合成を優先させることになった。そのため分析に必要な試薬や分析依頼費の使用が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画の最終年として、ポリマーの分析条件を確立し、今までに合成してきた種々のポリマーを分析し、評価を行う。
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