IT機器の世界的な普及に伴い、使用済ずみ電子機器からの有用資源の回収及び有害物質の適正処理は重要な問題となっている。本研究は、①炭酸溶融塩共存下で有機物を水蒸気ガス化して水素を製造する。②ガス化反応で得られて水素を燃料として燃料電池を形成させ、その起電力を利用して水蒸気を電気分解し高純度水素を製造する。2つの研究テーマから成る。 ①混合炭酸塩中にニッケル微粒子を分散させると、エポキシ樹脂の水蒸気ガス化が炭酸塩およびニッケル粒子によって促進されることを見出し、その結果をFuel Process Technology に発表した。 ②燃料電池を用いる実験では、直径25 mm厚さ150ミクロンの固体電解質(Hionic)にNi-YSZ(ニッケルとYSZ の複合材)とLSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)を張り付けた(Nexceris社製)ボタンセルと、直径 30 mm厚さ約300ミクロンの固体電解質(YSZ)にNi-YSZとLSMを張り付けた(Elcongen社製)ボタンセルの2種類を用いた。各ボタンセルに銀網(アノード側)およびニッケル網(カソード側)で挟み、更に2本の高純度アルミナ管(直径30 mm、長さ282 mm)で挟み込み、各種セラミック接着材を用いて貼り付けた。また各金属網と端子は銀線で接続した。反応ユニットを650~800℃に加熱し、固体電解質に0~3Vの電圧を印加してカソード側から飽和水蒸気を導入し、生成物を四重極質量分析計を用いて観測した。2V以上の印加電圧を加えると、極微量の水素の生成が観測された。しかし熱膨張率の異なる素材を張り付けたために薄膜状のボタンセルが直ぐに割れ、アノード側に混合炭酸浴を作り水素の生成を確認することはできなかった。
|