研究課題/領域番号 |
25340099
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山本 裕史 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (60380127)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生態毒性 / 一般水質項目 / 慢性毒性 / 主成分分析 / 年間変動 / 流域調査 / ミジンコ / 発光バクテリア |
研究概要 |
一級水系吉野川の主要な環境基準点である徳島市近郊の高瀬橋を対象に,平成25年4月~平成26年3月の間,1か月に1回程度採水した。現地でのpHやDO,EC(電気伝導度)など基本水質項目測定のほか,実験室内に持ち帰ってゼブラフィッシュ,ニセネコゼミジンコ,ムレミカヅキモの短期慢性毒性試験に加え,海洋発光バクテリアを用いたマイクロトックス試験を実施した。また,BODやCOD,硬度,アンモニア性窒素なども測定した。吉野川では,上記の高瀬橋での年間変動に加えて,上下流の4地点(大川橋,脇町潜水橋,高瀬橋,今切川河口堰)で11月に採水して試験を実施したほか,12月には淀川水系の3地点でも同様の試験を実施し,合計のべ19試料を対象とした。その結果,ニセネコゼミジンコについて毒性影響が検出されたのは6試料,ムレミカヅキモについては2試料,発光バクテリアでは1試料であった。得られた結果について,各水質値や毒性値を変数とした場合と,採水日と採水地点を変数にした場合の2パターンで,2変数間の相関解析ならびに主成分分析を実施して,傾向を調べた。 水質と毒性値について主成分分析をしたところ,アンモニアとBOD, CODの3種について第1主成分が高く類似性が確認できたほか,ECとミジンコの繁殖毒性や遊泳阻害は第2主成分が高く,類似性が確認された。これらは2成分間の相関係数も比較的高かった。 一方,採水日や採水地点を変数にした主成分分析では,ムレミカヅキモやニセネコゼミジンコの繁殖毒性が検出された採水日や採水地点が近接して類似性が比較的高い一方で,ニセネコゼミジンコの遊泳阻害と繁殖阻害の毒性が検出された地点は大きく離れる結果となった。また,上流から中流の地点(大川橋,脇町潜水橋)と,下流の地点(今切川,淀川流域河川)では同様の傾向が確認できた。今後,吉野川や淀川流域の調査を継続して実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたのは,吉野川流域に限り,予備試験で10地点,本試験で3地点,3季節の調査の合計19回の調査であったが,回数は同様であり,順調に実施したといえる。一方,予算や人員制限から,10地点ではなく,4地点とし,徳島市近郊の高瀬川に絞って,じっくりと詳細な年間変動を把握することとした。一方で,当初26年度以降に予定した淀川流域について,3地点の予備的な調査を12月に実施することができた。この調査は,26年度以降のもう少し大規模な調査に役立つものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ,ほぼ順調に調査を実施していて,特に問題はない。ただ,吉野川・高瀬橋の定点を取って見ても,ニセネコゼミジンコやムレミカヅキモに対する毒性に変動が見受けられる。吉野川・高瀬橋については継続して実施するとともに,合わせて吉野川流域の他の地点(今切川,脇町潜水橋など)や淀川流域の各地点でも複数回のサンプリング調査を実施し,水質項目値との相関,季節変動や流域の傾向を十分に把握できればと考えている。
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