研究実績の概要 |
最終年度である平成27年度も,25,26年度と同様に徳島市近郊の吉野川・高瀬橋で月に1回の採水をおこない,現地でのpHやDO,電気伝導度(EC)など基本水質項目測定のほか,実験室内に持ち帰ってゼブラフィッシュ,ニセネコゼミジンコ,ムレミカヅキモの短期慢性毒性試験を実施した。また,BODやCOD,硬度,アンモニア性窒素なども測定した。上記の高瀬橋に加え,吉野川流域の4地点(大川橋,脇町潜水橋,今切川河口堰,田宮川)で同様に採水して試験したほか,淀川水系の3地点(桂川・宮前橋,淀川・枚方大橋,猪名川・利倉)で試験を実施した。また,本年度は一部の地点の河川水について固相抽出によって有機物や金属カチオンの濃縮試料を作成し,本年は18試料+濃縮試料9×2種類ののべ36試料について試験を実施した。その結果,濃縮しない試料ではムレミカヅキモ,ニセネコゼミジンコ,ゼブラフィッシュでそれぞれ4,2,2試料から有害影響が検出された。一方で,濃縮試料では,毒性検出率は大きく向上し,特にキレート樹脂で濃縮した金属カチオン等の濃縮液では藻類で9割程度,発光バクテリアでも6割程度から毒性を検出することができた。有機物濃縮試料では検出率が比較的低かった。 水質と毒性値について主成分分析等の多変量解析を実施したところ,主成分分析では,昨年度まで同様にBODほか各種水質項目(pHを除く)第1主成分は高かった。その一方で,ミジンコの繁殖や致死毒性は第2主成分が高く,その特異性は顕著であり,毒性同定評価などを進め,人為的汚染とは異なるミジンコ毒性に影響を及ぼす因子の特定が求められる。クラスター解析では,昨年度までと同様に上流部と下流部でおおよそ分けることができた。さらに,重回帰分析を実施したところ,3生物に対する毒性はいずれの水質指標でも表現できないことがわかり,主成分分析と同様の結果となった。
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