アジア内陸の黄砂の発生源や輸送経路を解明するためには、発生源に特有な化学トレーサーを利用する方法が有効である。本研究では、自然界で同位体比が大きく変動するLi同位体に着目し、黄砂の輸送量が増大する春季に、九州西部で捕集したエアロゾル試料中のLi濃度とδ7Liの日間変動を測定した結果、1%HNO3で試料から溶出したLiのδ7Liは、その溶出率の増加と共に上昇することを見出した。このことから、1%HNO3可溶性Liのδ7Liは黄砂発生地域における土壌特性の違いを反映している可能性が示唆される。δ7Liは通常の四重極型ICP-MSで容易に測定可能であることから、黄砂の簡易トレーサーとして期待できる。
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