今年度は、未だ不明な点が多いBPAの神経系への作用とその分子機構の再現性と一般性を確認するため、PC12細胞とラット培養大脳皮質神経細胞に対して以下の解析を行った。(1)MTT assayを用いて細胞毒性を示さないBPAの濃度の探索とBPAを24時間添加した後の変化の観察を行い、ラット胎児(E17)由来の大脳皮質神経細胞でも同様であることを確認した。(2)PC12細胞に対するDNA側のエピジェネティックな作用の解析を行い、DNAメチル基転移酵素(Dnmt)阻害剤であるdecitabineを添加する実験の結果、BPAとdecitabineをPC12細胞に共添加すると、BPA単独添加時と比較して神経突起伸長度は有意な差を示さないことが分かった。よって、BPAが有する神経突起伸長作用はDNAのメチル化による遺伝子の発現制御機構を介していないことを見出した。また、PC12細胞に対するBPAのヒストン側の作用の解析の結果、特異的なリシン残基のアセチル化の亢進を見出した。(3)BPA暴露によるNr4aファミリー遺伝子の発現変動解析の結果、BPA添加後、Nr4aファミリー遺伝子は、発現変動しないことが明らかになった。
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