研究課題/領域番号 |
25340105
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
田島 木綿子 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員 (00450635)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境汚染物質 / 日和見感染症 / 生物濃縮 / POPs / 寄生虫感染症 / ストランディング / スナメリ / 臭素系難燃剤 |
研究実績の概要 |
2015年春に発生したカズハゴンドウ大量座礁156頭中33頭を回収し、2015年度中に全頭調査は終了した。その後、病理学的検索ならびに環境汚染物質生物濃縮解析という詳細検討を実施しているが、本務が多忙であったため、両者の解析ならびにその結果を比較・検討することは完了できなかったため、最終年度である2016年度に完了させる。このカズハゴンドウの脳サンプルも回収できたため、病理学的ならびに汚染実態それぞれ解析を進めている。さらに、生物濃縮を知るためにこのカズハゴンドウの食性解析を実施してくれる共同研究者を得たため、その結果よりどのように環境汚染物質が生物濃縮されていくのかについても新知見が得られることが期待される。 本研究の対象種である小型ハクジラのスナメリはストランディング調査で約40頭解剖することができ、本研究の資料も多く保存できた。 2015年12月に行われた国際海棲哺乳類学会では、オウギハクジラの病理学的研究成果を発表し、好評であった。世界的に環境汚染物質と日和見感染症の関係性は注目されていることが認識でき、本研究の重要性を改めて再確認した。11月にミャンマーで開催されたアジア保全医学会では海棲哺乳類セッションを開催し、アジアにおける海棲哺乳類研究者との交流を図った。特にミャンマーはこれから発展が進む国のため、本研究の成果を紹介し、地元研究者との連携に繋げていく基礎を確立できた。 ネズミイルカ科のスナメリとイシイルカのPBDEs生物濃縮解析成果を論文発表できた。スナメリの地域性を見いだすために、分子生物学的系統解析の成果を共同研究者と共に現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2015年春にカズハゴンドウの大量座礁が茨城県鉾田市で発生し、156頭中33頭回収し、本研究の解析も実施している。しかし、この事例は当初予定していない事例であったが、非常に貴重な症例のため、急遽本研究の解析も実施することとした。しかしながら、本務が思いの外多忙となり、この大量座礁個体により解析個体も増加したため、本研究の当初の予定よりやや遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
特に大量座礁のカズハゴンドウ33個体の解析を完了させる。ストランディングするスナメリについても毎年調査個体が増えるため、本研究の成果に繋がる個体を厳選し、論文化する。10月に台湾で開催されるアジア保全医学会ではカズハゴンドウの成果を発表する。カズハゴンドウの食性解析の成果と本研究の成果を比較・検討し、生物濃縮のメカニズムを検討する。ストランディング調査も引き続き継続する。博物館の公開HPのストランディンググーグルマップと比較し、汚染実態と日和見感染症の相関性に地域性があるのかどうか精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度実施予定であったカズハゴンドウ大量座礁の個体調査と解析が本務多忙のため終了に至らず、また博物館HPのストランディングマップ情報と本成果との検討を予定したが、サーバ更新の影響でマップ情報などがうまくいかず、想定異常に時間を要し作業完了できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
カズハゴンドウについて本研究の解析を完了させ、病理学的成果と環境汚染物質生物濃縮の解析結果の相関性を検討する。引き続き本研究の対象ストランディング種の調査も並行して実施する。未使用額はこれらの解析ならびに調査の各種経費に充てたい。
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