研究実績の概要 |
本課題では海岸砂丘が持つ生態系サービス機能について防災と自然環境の両面から検討することを目的とした。防災に関する東日本大震災津波被災地との比較は,復興にともなう大規模工事のため課題期間内に十分な比較ができなくなったため,大規模海岸砂丘である鳥取砂丘を対象とした植生構造の解明に注力した。 本課題では,a.海浜草原と砂丘幅に関する課題を中心に研究を進めた。国内にはよく保全された大規模砂丘がなく海浜植生構造とその成立要因解明が不十分なため,鳥取砂丘を対象にこれを解析しとりまとめた。鳥取砂丘は奥行きが1,000 m以上あり,多様な砂丘地形に加えて人為的撹乱が多いため,群落分布と自然・人為要因との関係に着目した。鳥取砂丘の天然記念物指定範囲を対象に,植物群落の位置と形,面積,植生調査からクラスター分析に基づいて群落分類を行った。環境要因は,自然要因に汀線からの距離,砂変動量,堆砂深を,人為要因に踏みつけと除草種別を使用した。群落は出現種の特徴から海浜型群落と雑草型群落にまとめられ,群落ごとは第二砂丘列より海側,砂丘地全域,内陸側に分布するものがみられた。砂変動の多い立地,踏みつけの多い立地,機械除草に特徴的な群落型が認められ,鳥取砂丘のような大規模な海岸砂丘では,自然要因に加えて人為要因が植物群落の分布に影響していることが明らかになった。鳥取砂丘のような大規模な砂丘地でも植生配置に人為要因の影響が大きいことは重要な成果と考える。 b.東日本大震災津波被災地として福島県松川浦に調査地を設定し,植生調査を実施していたが,復興工事により調査地が消滅して調査継続を断念した。このためc.砂丘幅と海浜草原の関係類型化は防災機能の整理に至らなかったが,課題終了後も研究を続け,さらに解析・考察を深める。本課題の成果は,一部公表済みで,残りの部分も公表のため投稿中である。
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