研究課題
基盤研究(C)
H25年度の主な研究実績は、データ整理、データの予備的検討、統計手法の検討、国際学会での発表である。1)データ整理:原票をスキャンして電子化するとともに、すべての入力についてチェックし、間違いを直した。その上で、各々の変数について、村ごとの代表値を地図上にプロットした図を作成し、サラワク州関連機関へ提出する報告書を編集した。2)予備的検討:ボルネオの熱帯林が住民にもたらす重要な生態系サービスとして、焼き畑を行うための調整サービス、薪、野生果実、狩猟動物(イノシシ)の供給サービスを選び、これらの利用と村周辺の森林被覆との関係について分析を行った。各世帯の経済状況や就労機会なども考慮にいれたGLMMを用いた検討の結果、焼き畑をのぞくこれらのサービスについて、森林面積が利用の強さに影響を与えているとの示唆を得た。ただし、多くの変数について地理的な相関が見られたが、これは考慮できていない。3)統計手法の検討:上に述べたとおり、本研究課題で分析対象とするデータは強い空間的自己相関をもっている。空間構造に配慮して分析を行う必要がある。空間構造のあるデータに対して使われるいくつかの方法を検討した。その結果、まず空間的自己相関の生じている空間スケールを特定し、相関が見られた距離より近い距離にある村すべてから平均的な影響を受けると仮定して、周辺の村の効果として扱うこととした。3)国際学会での発表:予備的な結果を3月にベルリンで行われたGlobal Land Project Open Science Meetingにおいて発表を行った。予備的な分析結果と今後の展望について述べた。
3: やや遅れている
空間構造のあるデータに対して使われるいくつかの方法を検討したが、あまり多くの類似の研究がないこと、既存の空間構造に配慮した分析法は、データの偏った分布などのため、適用しにくいことなどが明らかになり、独自の方法を開発する必要に迫られた。検討の結果、空間的自己相関の生じている空間スケールを特定し、相関が見られた距離より近い距離にある村すべてから平均的な影響を受けると仮定して、周辺の村の効果として扱うこととした。それと他の要因をいれて、ベイズ統計を使うことを決め、基本モデルの構築に至ることはできた。
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォームIPBESや国際研究プログラムFuture Earthの始動などの国際的な生態系サービスに関わる動向をにらみながら、この研究課題の成果のタイムリーな発信を目標としたい。とくに第一報となる論文の執筆・投稿を今年度中に行うことを第一の目標としている。その上で、森林や生態系サービスの変化が、村の社会に与えるより複雑な影響について検討し、次の論文につながる成果を得たいと考えている。
分析方法の検討に、計画よりも多くの時間を費やしたために、当初計画していた論文投稿や追加調査までにいたらなかった。今年度は、論文を完成させ学会や国際誌を通して成果発表する。研究費の一部はその印刷費用や成果発表のための費用を見込んでいる。また、次の論文テーマに沿った打ち合わせやデータ収集を行うための旅費に使う予定である。
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