研究課題/領域番号 |
25340111
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
酒井 章子 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30361306)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ボルネオ / 熱帯雨林 / 土地被覆 / 生態系サービス / 質問票調査 / 学際研究 |
研究実績の概要 |
本研究では、総合地球環境学研究所プロジェクト「人間活動下の生態系ネットワークの崩壊と再生」で収集されたサラワク州の主要河川バラム川・ラジャン川流域の 89 村における質問票調査のデータセットと、公開されている衛星データに基づく土地被覆図を解析して、周辺の生態系の状況と住民の生業や暮らしとの関係を明らかにした。 (1)非木材産物の利用について 非木材林産物は、森林によって供給される重要な生態系サービスの一つだが、その利用は世界のいろいろな地域で減少している。森林生態系の減少や劣化などがその潜在的要因の一つだが、貨幣経済の拡大など社会・経済的要因も深く関連している。森林の減少・劣化が住民に与える影響を評価するためには、生態的要因と社会的要因を同時に検討する必要がある。本研究では、調査地域において、非木材林産物利用の有無や頻度のばらつきがどのような要因で説明できるのか分析した。その結果、いくつかの林産物では森林面積が減少すると利用が減っていた。世帯の経済状況など、そのほかの社会・経済的要因も影響していたが、その影響の大きさ、影響の仕方は林産物の種類によって異なっていた。例えば、経済的に豊かな世帯では狩猟動物、野生果実の利用は増えるが、薪の利用は減る。このような違いは、住民にとっての林産物の価値と関連している。 (2)人口の増減について 世界の多くの地域同様、サラワク州でも都市への人口集中が急速に進行している。これに伴い、人々の生活における森林の役割は小さくなったと考えられがちである。しかしながら、都市化の実態を調べてみると、都市と地方の二重生活を送る人々が少なくない。本研究の解析から、二重生活を送る人々を含む地方(村)の人口増減は、村周辺の森林面積と正の相関があることが明らかとなった。人々の潜在的な森林への依存度は、人口統計から推測されるほどは減少してはいないことが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生態系劣化が社会に及ぼす影響を明らかにするためには、自然科学と社会科学の研究者の共同研究が必要であることは認識されているが、研究手法の違いなどから必ずしも簡単ではない。本課題では生態学を研究してきた代表者が社会学など文系の研究者と議論を重ねてデータを分析してきた。報告書の出版、学会やシンポジウムでの発表、論文執筆、投稿と順調に成果の公表を進めてきた。したがって、おおむね順調に進展したと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
未発表の論文の執筆、投稿を進めるとともに、海外のシンポジウムでの講演の招待を受けたので、そこで成果発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該研究課題についての調査・分析は、問題なく終了した。共同研究者が他の研究課題で得たデータを利用することが可能になったため、調査・分析、および人件費にかかる費用を当初の予定よりも減らすことができた。今後、未発表の成果を公表するにあたり、英文校閲サービス等を利用し、より優れた論文を完成させたい。
|
次年度使用額の使用計画 |
論文執筆、成果発表のための英文校閲、および論文投稿・印刷費用に当てたい。
|