研究課題
本研究では、総合地球環境学研究所プロジェクト「人間活動下の生態系ネットワークの崩壊と再生」で収集されたマレーシア・サラワク州の89村における質問表調査のデータセットと、公開されている衛星データに基づく土地被覆図を解析して、周辺の生態系状況と住民の生業や暮らしとの関係を検討した。非木材林産物は、森林の重要な生態系サービスだが、その利用は世界のいろいろな地域で減少傾向にある。森林の減少や劣化がその潜在的要因の一つだが、貨幣経済の拡大など社会・経済的要因も深く関連していると考えられる。森林の減少・劣化が住民に与える影響を評価するためには、定量的なデータを用いて、生態的要因と社会的要因を同時に検討する必要がある。本研究のデータセットを用いて分析した結果、森林が減少すると利用が減ることが、いくつかの林産物で示された。また、経済的要因も重要だったが、その影響は林産物の種類によって異なった。例えば、豊かな世帯がより狩猟動物を利用する傾向があった。これは、森林減少や動物の密度の減少が進んだことを背景に、森林にアクセスできる交通手段や効率よく狩猟ができる道具(銃など)を持つ世帯のみが、狩猟をしているためだと考えられる。この研究により、林産物利用に、社会的・生態的要因双方が影響を与えていることがデータから明らかになった。この結果については、8月にスイスのモンテ・ヴェリタで行われた国際シンポジウムでの招待講演で発表を行い、またBiological Conservation誌に投稿し掲載された。また、村落の人口動態と自然及び社会的要因の関連を調べたところ、村外に住んでいる村人の割合は、村の外との人的ネットワークと強い関連があり、また人口増の要因となっていることが示唆された。この結果については、3月に日本生態学会において発表した。
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Biological Conservation
巻: 204 ページ: 340-349
http://dx.doi.org/10.1016/j.biocon.2016.10.022