本研究ではこれまで構築されてきた生態系データベースを活用して環境価値評価に関連する人々の環境意識について実証的な研究を行い,価値判断に影響を及ぼす生態学情報を明らかにするとともに,その有効な利用法を提示することを目的とした。特にこれまで概念的に扱われてきた非市場材としての「生態系サービスの社会的価値」を将来の土地利用や自然資源管理に反映することを目的に,生態系サービスの社会的価値の指標化と空間評価を試みた。 本研究では国内を対象地域として時系列の社会経済・生態系データをもとに(1)具体的な土地利用・環境変化シナリオを作成し,それに基づいた(2)環境価値評価のための実証的研究としてシナリオ選好性調査を実施した。環境変化シナリオの作成にあたっては気候変動観測による予測値や生物分布推定モデルを導入し,既存の生態系情報の活用を試みた。科学的知見に基づいたシナリオを用いた社会調査の結果から,複数の社会価値指標を算出し、さらに(3)社会的価値を回答者の社会属性・空間属性毎に標準化し,景観指数を用いた空間解析を行い、最終的には(4)生態系サービス社会的価値の分布推定を行った。 最終年度は生態系サービス社会的価値の分布推定図の作成を行った。前年度までに実施した複数の回答者グループによる選好性(社会価値評価)とその空間解析の結果を地理情報システムにおいて分析し,生態系サービス社会的価値の分布推定図を作成した。また推定において重要な生態系情報について考察した。研究成果として学術論文を国際誌に発表した。
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