研究実績の概要 |
平成25年6月-10月、平成26年6月-12月に引き続き、平成27年6月-12月に東京湾における市民参加型のマハゼの住み処調査を実施した。本年度においては、京浜島つばさ公園、境川、金田海岸、行徳湿地、新浜湖、根岸湾、赤レンガ倉庫付近、村田川、多摩川、大森ふるさとの浜公園、鶴見川、東海緑道公園、富岡並木ふなだまり公園、平潟湾、帷子川の14か所において延べ約90調査、約2,300匹分のマハゼの全長データが集められた。また、朝潮運河においては集中調査が実施され、年3回(8月、10月、11月)、14測点で合計約330匹のマハゼの全長・湿重データを得た。特に、平潟湾、帷子川、多摩川、行徳湿地、朝潮運河、浦安(境川)において多くのデータを取得した。これらのデータを精査し、生活史を分類したところ、回遊型、滞溜型1(環境制限型)、滞溜型2(生息適地型)の3パターンが確認されるととともに、春発生群と夏発生群が全長コホート上で明確に区別され、東京湾におけるマハゼの生活史パターンの分類がほぼ検証がされた。 水圏環境を再現する数値モデル(MEL1D-MBモデル)を東京湾の京浜運河を対象に水域・海域を浅場・運河・湾内・深場の4つに分類して適用した。バロトロピックな循環の精度向上のため、潮汐の増幅率をモデルに追加して浅場・運河域での再現性を向上させ、水質の季節変化の様相を把握することができた。観測により整理されたマハゼの生活史パターンと合わせることで、動的な生息場の様相を把握でき、浅場・運河域での生息場造成(浅場造成)が系としての生息場適性の向上につながることを示唆する成果を得た。 こうした結果については、国内外の学会における発表の他、東京湾再生会議モニタリング分科会・東京湾再生官民連携フォーラムでの発表や「東京湾環境マップ (Vol.9, 10)」の発行等等を通して、広く行政・市民にも周知、啓発した。
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