研究課題/領域番号 |
25340114
|
研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
高田 宜武 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (30372006)
|
研究分担者 |
村上 拓彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20332843)
木暮 陽一 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (90371905)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 生態系保全 / 環境分析 / GIS / 個体群 / 帯状分布 / 環境傾度 / 人為的影響 |
研究実績の概要 |
新潟近郊の砂浜海岸において、砂浜汀線域から打ち上げ帯上部の範囲で小型甲殻類の生息状況を調査し、同時に生物の棲息に関連すると思われる環境要因について測定を行った。調査では、汀線に垂直にトランセクトをとり、一定間隔ごとに直径10cmのコアサンプラーにて深さ10cmまでの底質を採集し、1mm目の篩上に残った埋在性の小型甲殻類を保存し実験室に持ち帰った。持ち帰った小型甲殻類は、双眼実体顕微鏡下で同定し、個体数を計数した。トランセクト上にて底質硬度および地下水位を測定し、粒度組成等を測定用に底質を持ち帰った。地下水の塩分濃度を測定し、海水の浸透範囲を推定した。調査地の緯度経度をGPSで測位し、GISデータとして利用可能な状態にするとともに、調査地とした砂浜の立地条件をGISを用いて抽出した。砂浜の後背部に海岸道路が建設された佐渡市内の調査地では、人為的影響により小型甲殻類の密度が一時減少したが、今年度の調査では回復傾向にあると考えられた。また、新潟近郊の調査地では、バイオログGN-2プレートを用いて細菌類の炭素源利用能力を測定し、砂浜底質の細菌活性が小型甲殻類の生息環境の評価に活用可能かどうか検討した。各浜の汀線、打上げ帯および後背砂地において表層(0-1cm)および深層(4-5cm)の底質をコアにて採集し、実験室にて2.0gの試料を測り取り、滅菌食塩水にて10倍に希釈した。希釈試料を150μLずつバイオログプレートに接種し、23度にて48時間培養した後、マイクロプレートリーダーにて発色量(波長590nm)を測定した。発色量を比較すると、浜に湧出する地下水の影響をより強く受けていると考えられる5cm深のサンプルに砂浜間の違いがあり、後背に大規模な砂丘もしくは山地のある砂浜で発色量の比率が高くなる傾向があった
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
砂浜の環境傾度評価の一つとして細菌類による炭素源利用能力の砂浜間変異を検討したところ、砂浜後背地の地形によって活性が異なる可能性が示唆された。日本海沿岸の砂浜汀線域のナミノリソコエビを主とする小型甲殻類の生産構造が砂浜間で変異を示すことが以前の調査および昨年度までの本研究で明らかとなっていたが、陸域の影響を砂浜汀線域の生息環境に繋げるメカニズムの一つとして詳細な検討に値する結果だと考えられる。また、研究成果の一部が学会誌に受理され、印刷公表された。以上のように、研究は予定通り進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度および一昨年度と同じ調査地にて、同様の小型甲殻類の分布調査と環境要因の調査を行うとともに、今年度の結果と比較して年変動の影響を除去することによって、分布に強い影響を与える環境要因の抽出を行う。GISを活用して、砂浜汀線域と後背地の地形や土地利用の関係を検討し、研究のまとめを行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
英文投稿論文原稿の作成が予定よりわずかに遅れ、英文校閲の依頼を年度内に執り行うことができなかったため、次年度に繰り越して使用することとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
年度末には原稿が完成したので、新年度早々に英文校閲料として使用する予定である。
|