研究課題
1)ヨシの生育場である氾濫原の環境動態解析湖岸堤が存在しない時代の琵琶湖低湿地帯における冠水域の規模と頻度を明らかにするため、1982、1983年に調査された地盤高データをGISデータ化した。また、膳所藩の水位観測記録等から水位上昇量を推定した庄ほか(2000)等の結果を用いて水位の長期変化を調べたところ、1900年以降は水位上昇が1.5m以上になったことはないが、1718年から1899年までは最低でも56回と推定された。さらに、水位1.5m上昇時の冠水域面積は琵琶湖面積の約9%に相当し、特に南湖については湖面面積の約16%に相当すると推定された。このことから、18、19世紀の琵琶湖では、現在よりも高頻度の洪水下で広範囲の氾濫原が維持されていたと考えられた。2)ヨシの遺伝構造と集団維持機構の関係琵琶湖内湖のヨシ集団の遺伝的多様性、クローン多様性の解析、フローサイトメトリーによる倍数性構成の解析を実施した。内湖集団の多くで8倍体と10倍体が混在し、いずれかの倍数性が優占する傾向が認められた。内湖の成因との倍数性構成の関係については明確な傾向は見出せず、成因以外のより広範囲の情報を収取・整理し、再評価する必要があると考えられた。3)遺伝的組成を考慮した集団動態の数理モデル構築昨年度までに開発された遺伝的組成別推移行列モデルを用いて数値計算を行い、栄養繁殖割合と近交弱勢が集団増加率に与える影響のシミュレーションを行った。特に、栄養繁殖割合と近交弱勢の相互作用が相乗的に集団動態に作用するか、相殺的に作用するかについて評価する試みを行った。栄養繁殖割合が高いほどヘテロ個体が少なくなるため、近交弱勢により集団の個体数が減少するという傾向を持つ。ホモ個体の減少によってヘテロ個体の割合が増加すると近交弱勢による個体数減少の程度が和らぐため、この二つは相殺的な効果を持つことが分かった。
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