日本の家庭部門・温室効果ガス排出量削減に最も効果的な対策である、高断熱・高気密「エコ(省エネ)住宅」新築・リフォームの普及は、不十分なままとなっている。国内各地で2000年代半ば以降展開されてきた関係主体間連携に基づく「エコ住宅」普及動向の近年の状況と、推進組織体制のあり方を探る本研究・最終年度は、まず前年度から継続して、関連文献の収集・分析作業を行った。また、各地の取り組みの現状・成果・課題の把握・解明を目指し、北海道や西日本も含め、普及に向けた先導的事業を展開してきた自治体や、エコ住宅の健康改善効果に着目した活動を行っている団体なども対象とする資料収集・聴き取り等の調査を実施した。その上で、収集資料・調査データの分析を進めて、3年間の研究結果を論文や報告書に取り纏め、エコ住宅普及への推進組織のあり方や具体的な普及策を提言している。 とりわけ、活動が継続実施されている地域の近年の動向から、普及に向けた組織体制として、地域の環境NPOと住宅建築関係団体の強い連携の下、地方自治体や大学等のエコ住宅専門家、消費者団体、医療専門家・団体も含む、地域内の広範な主体間連携体制が望ましいことが明らかとなった。 また、エコ住宅普及の大きな障害として従来、(1)住まい手への情報提供・啓発の難しさ、(2)地場住宅事業者全般的な技術力・PR力の低さ、(3)割高な建築・導入費用の3点が挙げられてきた。各地の先導的事業・取り組みからは、課題克服のために(1)については、多様な「見える化」手法の活用とエコ住宅の広範な利点のPR、地域性に適合した住宅の追求、市民の関心・行動レベルの多様性を踏まえた柔軟なアプローチが、(2)(3)に関しては、地域経済振興を視野に入れた、自治体による地場事業者対象の総合的な育成施策展開、及び初期費用負担軽減への助成拡充が要請され、これらを多主体連携で行うことが望まれる。
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