研究課題/領域番号 |
25340125
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 石巻専修大学 |
研究代表者 |
山崎 達也 石巻専修大学, 理工学部, 教授 (60174653)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオエタノール / プロピレン合成 / コバルト触媒 / アセトン |
研究概要 |
低品位バイオエタノールからのプロピレン生成選択性を大幅に向上させる触媒システムを構築するための基礎的研究として、初年度は以下の3点について検討を行った。 Co/セリア触媒のアセトン生成率向上を図るため、4つのセリア担体にCoを担持し、それらのエタノール水蒸気改質反応特性を評価した。その結果、担体セリアの結晶性や比表面積によってCoとセリアとの相互作用力が変化するとともに、水蒸気改質反応特性が変化することが明らかになった。これはセリアとCoの相互作用力を制御することによるアセトン生成活性の向上の可能性を示唆するものと言える。 プロピレン生成特性に関する知見を得るために、「Co/セリア触媒」と「Pt/アルミナ触媒」を配置や混合比を変えて組み合わせ、プロピレン生成反応を試験した。2つの触媒を「2層に配置」あるいは「均一物理混合」した触媒系を用いると、それぞれの触媒を単独で用いた場合よりもプロピレン生成速度が向上し、特に、均一混合触媒のプロピレン生成活性が高くなった。プロピレン生成挙動が2つの触媒の混合の仕方に依存することから、2つの触媒のそれぞれが関わるプロピレン生成ルートが存在することが示唆された。Co/セリア + Pt/アルミナ混合比2 : 1の触媒活性が高かったが、触媒系中のPtはむしろ反応を阻害し、Ptを含まない触媒系のプロピレン生成活性がさらに高くなることがわかった。 プロピレン生成メカニズムに関する知見を得るため、含水量を変化させたバイオエタノールの反応特性を調査した。実バイオエタノールを試料とした場合、水/EtOHモル比が 1より3の方がプロピレン生成量が高くなることが示された。これより、水がオリゴマー化反応を抑制するが、バイオエタノール中の不純物がアセトンルートによるプロピレン生成を促進したことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体として当初計画に対する達成度はやや遅れている状況である。 セリア担体物性と活性との相関を検討し、最適なセリア担体のモルフォロジーを明らかにする予定だったが、合成パラメータの曖昧さのため安定的に様々な物性のセリアを合成するまでには至らず、アセトン生成率の大幅な向上を達成することができなかった。ただし、触媒学会参照触媒や通常法で調製した4つのセリア担体を用いることで、本反応に対するあるべきセリア担体の大まかな条件は明らかになりつつある。 「Co/セリア触媒」と「Pt/アルミナ」を均一物理混合した触媒系が、高いプロピレン選択性を示すことを見いだした。エタノール転化率の低さの改善に課題が残っているが、現在それを克服するため、セリアのモルフォロジー制御や有効なCo担持法の開発を進めているところである。また触媒系の1つであったPtがむしろプロピレン生成にネガティブだったことから、それを越える触媒金属種の探査を進めている。 プロピレン生成メカニズムの解明に関しては、反応に及ぼす水の影響を明らかにした。ただし、バイオエタノール中の不純物と推定される物質を用いたモデル反応試験ではまだ実バイオエタノールの結果を再現できておらず、反応に影響を与える不純物の特定は試行錯誤の段階である。これは、予定していた大型分析機器(XPS、XRD)が故障等により利用できない時期があり、触媒の表面組成や担持金属の電子状態の解析などが十分に実施できなかったことが原因の1つである。また、それに関連して学理的な触媒調製の開始が遅れたことも研究の進展がやや遅れ気味である要因と言える。現在は大型分析装置が利用可能な状況になっており、現在鋭意解析を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、アセトンを経由するプロピレン合成ルートの反応機構を明らかにしながら、プロピレン生成量および生成選択性を高める触媒系の開発を進めるが、特に前年度に大きな前進が認められなかったアセトン生成活性の向上を目指して、Coの担持状態を制御した触媒の調製を行い、Co担持状態とアセトン生成反応特性との関係を明確化しながら触媒改良を進める。今年度は大型分析機器による触媒金属の電子状態解析を積極的に利用する。またそれに加えて以下の点を明らかにすることを予定している。 バイオエタノール中の不純物が反応に及ぼす影響を評価するため、協力関係にあるメーカーにより提供される様々な精製度の実バイオエタノールを試料として、前年度によりよい成績が認められた触媒系を中心に、アセトンおよびプロピレン生成反応特性を系統的に試験する。さらに、触媒毒あるいは促進剤として作用する物質の作用機構を明らかにするため、「反応物組成および表面堆積物」と「反応特性」との相関を評価する。 触媒毒による失活メカニズムを明らかにするため、メーカーとの協力でリストアップされた触媒毒物質をエタノールおよび反応中間生成物に一定量添加したモデル物質を用いて触媒反応試験を行う。昨年度の研究により、バイオエタノールの反応挙動は、1成分の不純物の単純な添加では説明できないことが示されたことから、多成分系の溶液について系統的に解析を行う。幅広いSV領域にわたる反応実験で、プロピレンおよびアセトン生成、さらにコーキングに及ぼす不純物の直接および間接的影響を素反応過程レベルで評価し、反応促進および触媒劣化の原因究明を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
触媒調製の最適化に時間を要したため、反応試験を行う実験補助者への人件費が少なくなったこと。また、東北大学等への分析依頼が、先方の機器の故障等のため少なくなったため。 触媒の調製は進んでおり、昨年度に行えなかった分の反応試験を実施する必要がある。そのため、今年度は昨年以上に実験補助のための人件費を要する。また、触媒試験等の効率化のため、反応装置および分析機器を一部増設する経費として利用する。さらに、外部機関への分析依頼や協力の依頼が昨年度を上回ると考えられるため、謝金として一部を利用する。これらの経費のため、今年度は当初予算よりやや多くの支出が見込まれ、それに充当するために利用する予定である。
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