低品位バイオエタノールからアセトンを経由してプロピレンを選択的に合成する触媒システムを構築するための基礎的研究として、当該年度は以下の点を中心に研究を行った。 1. プロピレン生成の前駆体であるアセトン生成とCo系触媒の物性との関係を明らかにするため、まず、担体特性とアセトン生成の相関を検討した。純エタノール由来の水溶液の反応では希土類酸化物を添加してもアセトン生成に大きな変化は見られなかったが、わずかに硫黄分を含むバイオエタノールの反応では、La2O3の添加によりアセトン生成量が増加し、水蒸気改質活性が低下する定常活性付近ではアセトンが主生成物となった。その選択性は20%を越え、希土類を添加していない触媒を上回ることがわかった。 2.つぎにCoの電子状態を改質し、それに伴うアセトン生成特性を検討した。Co/CeO2触媒にFe、NiおよびCuを少量添加した触媒について検討したところ、試薬用エタノールの反応ではFe添加触媒でアセトン生成率が上昇し、Cu添加触媒ではエタノール転化活性は減じるもののアセトン生成選択性は向上し、試薬用エタノールの反応でもアセトンが主生成物となった。一方、バイオエタノールの反応では、アセトン生成に及ぼすこれらの金属の添加効果は小さくなった。これは、不純物として混在している硫黄成分が添加金属と相互作用しその効果を弱めたためと考えられる。
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