研究課題/領域番号 |
25340129
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
重松 利信 佐世保工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (10390535)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 太陽光発電装置 / 劣化調査 / 高専 |
研究概要 |
太陽光発電システムの地域性による発電量や劣化の差やそれに対する実証実験はほとんどなく、早急な調査研究が望まれている。一方、全国の高等専門学校には、平成10~11年度にほぼ同一規格の太陽光発電装置(40kW級)が設置されており、その発電データが記録・保存されている。これらを用いて日本各地の発電量の逐次確認・経年劣化と地域性との関係を示すことが本研究の目的である。ところで、全国57校の国公私立高専の内、太陽光発電の期待できる太平洋沿岸を中心に39校の高専に1999年~2001年を掛けて数十kW級の太陽光パネルが設置されている。これら太陽光発電施設は、自然による風化・腐食による性能劣化などのフィールドテストには最適な状態にある。このように日本全国に、同時期に、同一規格の太陽光発電システムが設置されている例はなく、この点に注目して劣化調査の計画を立てている。 調査研究の手順として、以下のステップに従った調査を行っている。1.稼働状況調査,2.発電量推移,劣化調査,3.地域による発電量比較調査,4.継続的発電量蓄積手法開発。 本年度は調査手順1, 2まで行っており、40kW級の太陽光発電システムを保有している全国の高専39校のうち18校のフィールド調査が完了した。また、発電量の時系列推移のデータ解析も進めている。現在のところ、年に数パーセントの劣化が確認されるが、日照時間の低下を考慮すると、発電効率の低下はほとんど見られない。また、目視による劣化調査も行った。17年前に設置された北九州高専のパネルでは、パネル数枚にシリコン単結晶の剥離が起こり、水分の凝集が起こっている。これまでの調査では、明らかな剥離が確認されたのは18校中2校である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一次調査(稼働状況調査)としてソーラーシステムが設置された39高専に対して、現在の稼働状況に関するアンケート調査を実施している。アンケートの回収数は半数の18高専から得られた。その結果を以下に示す。設置を10年以上経過して、現在も発電しており、データ保存,発電量モニター表示がなされている高専が14校であった。現在も発電しているが、データ保存はされていないが,発電量モニターの表示はなされている高専が1校であった。現在も発電しているが、データ保存,発電量モニター表示ともになされてない高専が3校であった。 さらに第2次調査として発電量の時系列での推移調査を行ている。調査した18高専の内、9高専のデータを解析し,発電効率の時系列変化を明らかにした。その結果、見かけ上の経年劣化特性は年数パーセントの低下があることがわかった。ところが、1日あたりの日照時間の推移と比較すると、日照時間の低下は約15%(47分)あり、発電電力にはほとんど変化がなく、発電効率の経年劣化はほとんどみられないことを明らかにした。また、目視による劣化調査も行っており、シリコン単結晶の剥離が起こり、水分の凝集が起こっている状態を発見した。パネルの劣化は18校中2校で見られ、パネルの焼け焦げが1校で見られた。 これらの進捗状況は、当初計画に比較して順調に進められていると判断できることから、「おおむね順調に進展している」と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている調査は、以下のステップに従った調査を行っている。 1.第1次調査・稼働状況調査 2.第2次調査・発電量推移,劣化調査 3.第3次調査・地域による発電量比較調査 4.第4次調査・継続的発電量蓄積手法開発 調査範囲は全国高専のうち1999年~2001年を掛けて数十kW級の太陽光パネルが設置されている39高専を対象としている。現在までに、18高専の調査を完了しており、残り21高専の調査を進める必要がある。困難な点は、データ収集に使われているパーソナルコンピュータは、設置された15年前のままの場合が多く、古いデータは上書きされて残っていない場合が多い。また、パネル設置に関して、各高専が独自に行っているためデータ格納方式に大きな相違があり、データを読み解くことから行う必要があるため、この点が最も時間を要する。今後、PCの更新を含めてデータ格納ソフトの改善を視野に入れる必要があり、高専機構・本部事務局施設課と連携する手法を模索する。さらに、パネルの劣化に関して、見た目の劣化調査はもとより、VI特性を測定できれば、大きな手掛かりになるが、そのためにはパネルを外し、産業総合研究所に持ち込んでの調査が必要となる。産業総合研究所・太陽光発電工学研究センター・太陽電池モジュール・信頼性評価連携研究体への協力依頼や佐賀県工業技術センター・材料環境部との共同調査も視野に入れたい調査への拡充も考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題は平成25年度より3年間の予定である。平成25年度研究計画に従い、設置後15年を経過した太陽光発電装置の劣化状況のフィールド調査を行ってきた。計画では全国を万遍なく調査する予定であったが、25年度は九州近郊を中心に調査したため、次年度使用金額が生じた。 本研究は①劣化状況のフィールド調査,②データ格納手法の開発,③データ集約システムの構築の3本柱である。この研究方針に従った使用をを行う。 まず、フィールド調査のための旅費,②,③の開発のための物品調達費などに使用する計画である。
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