日本各地の高等専門学校には,環境教育の一環として平成10~11年度に,ほぼ同一規格(40kW級)の太陽光発電施設が設置されており,各校が独自に教育・研究に利用している.ところで,2011年の東北地方太平洋沖地震に伴う福島原子力発電所の事故以来,再生可能エネルギーへの期待が増大し,メガ級のソーラー発電所の数は震災前の16倍にも上っている.ところが,その耐久性や劣化特性および設置による環境への影響などの調査・研究は未だ十分に進んでいるとは言えない.そこで,全国の高等専門学校に設置されている太陽光発電施設を調査対象として,発電データを調べることで劣化特性ばかりか,その地域性や環境への影響調査を含めた総合的調査を行った。 調査対象は全国57校の国公私立高専の内,太平洋沿岸を中心に39校の高専(最も北は函館,最も南は沖縄)である.その全ての施設を調査した結果、発電量の低下が認められた施設は6割あり,その低下は年間3%の低下率であった.低下のあった施設は全国に等しく散らばっているにも関わらず,低下のなかった施設は比較的九州を含む西日本に偏っていた.しかしながら,セルの剥離をはじめとするパネルへのダメージは9割の施設で確認された.施設全体で見るとAD変換を行うパワーコンディショナーなどの附属設備の不具合は全体の5割程に留まり,ケーブルや家屋に不具合が発生した施設はなかった. 以上のようなフィールド調査によって,設置後10年以上経過した太陽光パネルはパネル自体の劣化(セルの剥離)は生じるものの,顕著な発電量低下に結びつくことはなく,発電量低下が見られるのは4割程度であることがわかった. 更に,セルの剥離は日本のどの地域でも地域の隔たりなく生じることから,パネルの製造方法あるいは製造過程に問題があると思われる.
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