研究課題/領域番号 |
25340130
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三村 直樹 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 主任研究員 (50358115)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオマス変換 / 触媒 / 5-ヒドロキシメチルフルフラール / 酸化 |
研究概要 |
「バイオマス原料に特有の元素組成、分子構造などを生かすことにより、石油化学では合成が困難な機能性化合物を効率的に製造する手法の開発を行う。具体的には、セルロースを高分子の原料に変換して使用するために必要な触媒反応技術を研究する。」という目標に対して、今年度は「グルコースから5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の製造」および、原料を遡って「セルロースから5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の製造」そして、「酸化反応用触媒の構造制御と分析」を行った。 グルコースを原料とするHMFの製造に関しては、リン酸カルシウムが適した触媒として見いだされ、高収率でHMFを得るために必要な反応条件の検討を詳細に行った。その結果、反応温度190℃、触媒量2.0g、反応時間1時間が適切な反応条件であることが分かった。その際のHMFの収率は44%であった。溶媒は、当初の目標どおり水のみを使用し、有機溶媒は一切使用しなかった。 原料を遡って、セルロースを原料とするHMF合成にも展開した。リン酸カルシウムはセルロース原料の変換にも効果的に働くことが確認できた。セルロースは、ソルビトール合成やグルコース合成に関する既報で報告されているボールミル処理で結晶性を低下させることにより、本反応系でも反応性が大きく高まることがわかった。天然木材からもHMFを製造できることも明らかになった。 酸化反応に使用する予定の貴金属ナノ粒子触媒を高分解能分析電子顕微鏡で観察し、触媒の調製方法によってナノ粒子の構造である、混合状態とコアシェル状態を作り分けられることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「グルコースから5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の製造」については、高性能な触媒を見出した。 「HMFの酸化」については、使用予定の触媒の分析を行い調製法と構造の相関が明らかになった。反応についてはほとんど実施していない。 酸化反応を実施する代わりに「グルコースから5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の製造」を26年度以降の計画から前倒しして実施し、比較的高いHMF収率を得ることができている。また、さらに原料を遡って天然木材からもHMFの合成が成功し、前倒しした課題が大きく進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね想定通りの進捗を得ているので、計画に従って着実に研究を進捗させていく予定である。25年度の取り組みが弱かった「HMFの酸化によるフランジカルボン酸(FDCA)の製造」についての取り組みを強化していく予定である。また計画を前倒しして実施し、研究が大きく進捗している「セルロースからのHMF合成」については、天然木材や廃棄物由来のセルロースの変換についてさらに詳細に検討し、真に実用的な反応となるように検討を進めてゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品類については現有の備品や消耗品を有効活用するなど節約に努めたため想定よりも少ない額であった。また、酸化反応について重点的に行わなかったため購入予定の酸化反応用の反応器を購入しなかった。旅費については、行先として欧米を想定して計画していたが、実際に行ったのは台湾であったので航空運賃が少なくなった。さらに航空運賃についても出来るだけ安価な運賃を選ぶなど、物品費と同様に節約に努めた。 分析機器(備品)の購入、契約職員の人件費または、成果発表のための旅費に充当し、研究の加速的な進展に資するように使用する予定である。
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