最終年度は、流通式のワンパス合成を目指して、前年度までに見出しているリン酸カルシウム触媒を用いた5炭糖を変換する触媒反応に取り組み、回分式反応、流通式反応共に好結果を得た。5炭糖の一つであるキシロースを原料として、グルコースと類似の反応機構である(1)異性化(2)分子内脱水反応の2ステップ反応を経るフルフラール合成を行った。当初の予想通りに6炭糖に高活性であった触媒は5炭糖にも効果的に作用することが分かり、反応機構が類似しているためであると考察した。高圧対応の金属製反応管に触媒を充填して高圧ポンプで原料の水溶液を送液した。出口には背圧弁を取り付け、内圧を高めることで溶媒の沸騰を抑制した。中断をはさみながら計12時間もの間反応がほぼ一定の転化率・選択率を保ったまま安定的に進行し、バッチ式に換算すれば9回分に相当する量であった。 期間全体の成果の要点をまとめると、以下の通りである。(1)6炭糖であるグルコースからの樹脂原料へと容易に変換可能な分子であるHMF合成に高活性を示すリン酸カルシウム触媒を見出した。(2)天然物や廃棄物資源をそのまま原料として用いた場合にもリン酸カルシウム触媒は効果的であることが分かった。(3)6炭糖だけではなく、ヘミセルロース中に多く含まれる5炭糖のキシロースからのフルフラール合成に対してもリン酸カルシウム触媒は高活性を示し、液相流通式装置を用いた連続反応にも成功した。(1)~(3)の成果全てで、反応用の溶媒は水のみを使用し、リン酸カルシウムは生体材料にも使用されるような人体に対する悪影響がほとんどない物質であるので、環境にやさしい触媒反応の構築につながる発展性のある成果であった。
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