本研究では、炭素制約が企業活動に与える影響を、経済モデル構築および計量経済的な手法によって分析すると同時に、国境税調整などの影響軽減政策を経済学、法学的、政治学、倫理学的な側面から検討する。具体的には、すでに明日香らが構築したアジア地域を対象とする部分均衡経済モデル(CASE Asia)を、最新の各国の政策動向を取り入れ、新たにEUやアメリカなども含めた多地域モデルである一般均衡経済モデル(CASE Global)に拡張し、炭素制約の経済影響(例:GDP、生産量、市場占有率の変化)を国および産業レベルで明らかにする。平成25年度は、1)CASE Globalモデル構築の第一段階として基礎構造の構築、2)EU ETS航空分野域外適用問題の打開策に関する関係者へのインタビュー調査、の二つを実施した。1)に関しては、各産業分野排出関連の排出関連の情報として、 各産業排出量、各産業排出原単位(t-CO2/GDP)、各産業排出削減数値目標、各産業電力消費水準(電力消費量/GDP(あるいは粗付加価値))、電力の排出原単位、各産業間接排出量、各産業直接排出量、国の削減目標を実現するために各産業に設定された排出削減数値目標(あるいは負担の大きさ)、各産業における排出削減限界コストの推定値、電力部門の生産費用とその構成データなどを収集した。2)に関しては、EU委員会、国際民間航空機関(ICAO)、フランス政府担当者、中国政府担当者、日本政府担当者、日本の民間航空会社担当者などのスタンスに関して、文献調査およびインタビュー調査を行い、EUが妥協せざるを得ない状況にあることを理解した。
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