研究課題/領域番号 |
25340136
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石井 敦 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (30391064)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | デモンストレーション / 炭素隔離技術 / 意思決定要因 / マスメディア / ガバナンス |
研究概要 |
CO2を大気中から隔離する技術であるCCSが近年,有望な気候変動の緩和策として注目されている.しかし,CCSの技術開発には技術的・政策的なリスクをめぐって論争がある.本研究の目的は、この社会的受容性を大きく左右する市民のリスク認知に多大な影響を与えるマスメディア報道と、同技術のデモンストレーションプロジェクトとの相互連関を明らかにすることである。 本年度は日本全体のCCSに関するマスメディア報道の文脈を明らかにするため、言説分析によって日本の三大紙におけるCCSのフレーミングを明らかにし,メディア言説がCCSのガバナンスに対して持ちうる政策的含意について考察した.その結果、日本の新聞報道はCCSを大幅なCO2排出削減が可能な革新的技術と表象し,技術開発に対する楽観主義的な言説を構築する一方で,CO2漏洩リスクやカーボン・ロックインといった問題を言説的に捨象していた.日本のCCSガバナンスの文脈では,日本の新聞報道は既存のテクノクラート主義的な統治構造を言説的に補強する政治的な機能を持っていることが明らかとなった。 新聞の言説データを収集するデータベースを精査した結果、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日本経済新聞、北海道新聞、苫小牧民報における炭素隔離技術に関する報道データを収集した。また、苫小牧プロジェクトに関する1次資料(苫小牧市議会議事録、苫小牧CCS促進協議会通信、経済産業省審議会資料、インターネットブログ)はインタビューデータを除いて、ほとんどを収集した。マスメディアとデモンストレーションプロジェクトのガバナンスとの相互関係に関する理論的な枠組みに関しては、一次資料などとも検討を行った結果、全体のCCS政策とも併せて考察していかなければならないことが判明したに留まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インタビューデータを収集するにあたって、現在進行しているプロジェクトに関するインタビューを行うためには、さまざまな許可や事前の交渉など、必要事項が通常よりも多くなっているため
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、インタビューデータの収集を行い(聞き取り調査対象者の同意を得ながら研究を進める)、一次データの包括的な分析を開始する。また、マスメディアとデモンストレーションプロジェクトのガバナンスとの相互関係に関する理論的な検討を平成25年度から引き続き行う。新聞報道データベースで収集したデータを用いて、フレーム分析を行う。また、炭素隔離技術は温暖化問題の文脈において議論されているため、温暖化報道一般の文脈についても留意する。
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次年度の研究費の使用計画 |
インタビューデータを収集するにあたって、現在進行しているプロジェクトに関するインタビューを行うためには、さまざまな許可や事前の交渉など、必要事項が通常よりも多くなっているため、インタビューを行う出張に行けなかった 次年度使用額は、当初計画していた苫小牧と東京でインタビューを次年度に延期することによって生じたものであり、延期したインタビューに必要な経費として平成26年度請求額とあわせて使用するものである。聞き取り調査対象者の同意を得ながら研究を進める。
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