研究課題/領域番号 |
25340138
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安村 直樹 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (70280948)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 補助金 / 多様性 |
研究概要 |
1980年代に林業補助金を廃止したニュージーランドにおいて、数百ヘクタール規模の森林所有者5人を対象に、森林経営の実態調査を実施した。ニュージーランドの主要樹種であるラジアータパイン(RP)の伐期は21年~35年まで広がっていた。RPだけを植えている所有者は見られず、他の針葉樹や広葉樹を植える多様性も見られた。自ら土地を保有し資金も出す経営形態だけでなく、投資者から資金を預かるパートナーシップ造林やSyndicateを設立するなど、経営形態もさまざまであった。木材販売収入だけでなく、酪農やキャンプ場収入など多様な収入源が確認できた。ニュージーランドに居る、1万人を超える森林所有者のうちわずか5人の事例であるが、これまでに調査したきた企業有林と比べ、さまざまな意味で多様性が確認できた。こうした多様性がニュージーランド全体の森林経営の持続性を担保していると考えられた。 低コスト林業を実現するためにコンテナ苗の導入を進めている宮城県や岩手県において、苗木生産業者と素材生産業者を対象に、コンテナ苗の生産と利用の現状に関して調査を実施した。コンテナ苗の生産を開始するには生産設備への投資が必要なため、大規模業者ほどリスクを図りかねてコンテナ苗の生産に踏み切れていない状況が確認された。素材生産とともに再造林も手がける素材生産業者からは、コンテナ苗の将来性を不安視してコンテナ苗の利用に前向きになれない森林所有者が多く居ることを聞くことが出来た。永年続いている造林補助金の存在が生産者側にも利用者側にも、技術や施業の固定化を招いていることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内(西南日本)調査が実施できていないほか、東北日本においても施業に関するデータが十分に入手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
当初ニュージーランド南島での調査を予定していたが、小規模や中規模の森林所有者を対象とした調査を実施するのは想定以上に困難だったため、これまでの調査で得られた手がかりを元に再び北島において調査することを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は自らでニュージーランドの中小規模森林所有者に対して調査依頼をする予定であったが、その作業は想定以上に困難であった。この調査を実施するために、現地の林業コンサルタントに謝金にて協力を依頼することにした。この契約額が未定だったこともあって国内調査を控えたため、当初計画より執行額が少なくなり、次年度使用額が生じた。 当該年度に実施できなかった国内調査に充てるほか、ニュージーランドの中小規模森林所有者の被験者を増やすため、謝金支払いに充てる計画である。
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