1980年代に林業補助金を廃止したニュージーランド(以下NZ)において一昨年度、昨年度に引き続き、森林所有者を対象にした森林経営の実態調査を実施した。NZにおける1990年代の第3次造林ブームの造林主体は大規模層と中小規模層であり、植林されたラジアータ松(RP)が伐期を迎えつつある中で中小規模層の動向把握は重要性を増している。そこでNZ農家林家協会に被験者選定を依頼する等し、2016年2月に中小規模層9名を対象に聞き取り調査を実施した。2000年代に頻発した風害によって浸食のリスクにさらされた土地を所有する農家は、地方政府の実施する持続的土地利用イニシアチブ事業のもとで拡大造林に取り組んでいた。基本的に林業に対する補助金はないが、公益的機能の高さやその及ぶ範囲に応じ、期間の限定された補助金の存在することがわかった。 補助金に依存しない低コスト林業の一方策として疎植化があげられる。植栽密度を考えるにあたっては苗木生産の実態を把握する必要があることから、日本の森林のおよそ1/4を占める北海道において苗木生産業者を対象に聞き取り調査を実施した。北海道では今後、造林面積の拡大に伴う苗木需要の増大が見込まれる一方、苗木生産では出荷期の労働力不足が指摘されている。そこで出荷期に着目しながら、北海道における苗木生産の現状と生産力拡大に向けた課題を明らかにした。苗木生産に関する作業には季節性があって、春や秋の出荷期にはとくに多くの労働量が必要となる。なかでも苗木品質を左右する工程である掘取、抜取と選苗には人手が多くかかっている。北海道における労働力、機械・資材メーカーの将来見通しは明るくないが、苗木品質を犠牲にして生産量を維持・拡大することはあり得ない。掘取、抜き取りと選苗の生産性を向上し、苗木生産力を拡大するためにはこれらの工程に関わる機械化と苗木規格変更や緩和が課題となる。
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