本研究は、気候・エネルギー政策分野で、ドイツは日本よりもなぜ早期に非漸進的政策転換を経験したのかという実証研究上の疑問に、気候・エネルギー政策について異なる立ち位置をとる複数都市における政策形成と、中央(連邦)における政策形成の相互作用という観点から迫ることを目的とする。 この目的を達成するために、①政策過程論の理論先行研究のレビューに基づいて、中央(連邦)と地方を規律する制度、気候・エネルギー政策に深く関与するアクターの立ち位置、利害、理念を分析するための枠組を構築し、②日本とドイツの都市における気候・エネルギー政策に関する事例先行研究をレビューして、日独それぞれで、気候・エネルギー政策について立ち位置を異にする複数都市を選定し、③①で構築した枠組に基づいて、当該都市およびその都市を管轄する州・県における気候・エネルギー政策を比較分析する。 平成27年度には、平成25、26年度に調査を実施したドイツの1市・1村およびこれらを管轄する州と、隣接する大都市州で追加調査を実施した。またあらたに風力発電が盛んな1市で文献収集・聞き取り調査を実施した他、北海の大規模洋上風力から供給される電力を南部州へ送るための送電線建設に関する政治についても文献収集・聞き取り調査を実施した。日本については、柏崎刈羽発電所の事例に関し追加調査を実施した。 平成27年度には、ドイツの1事例都市における調査研究結果(「エネルギー政策における中央政治と地方政治の相互作用 - シュターデ市を事例として -」)をはじめ4件の報告を行った。また日本の原子力政策転換、ドイツ、シュターデ市におけるエネルギー政策転換について論文を執筆、投稿した。その他の事例についても論文を執筆し、報告、公表する。 なおエネルギー政策転換は現在進行形で進んでいるため、今後も追加・補完調査を実施する必要があることを付記する。
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