研究課題/領域番号 |
25340146
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鳥取環境大学 |
研究代表者 |
相川 泰 鳥取環境大学, 経営学部, 准教授 (90412155)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境と社会活動 / 環境NGO / サプライチェーン / 中国 / 日中協力 |
研究概要 |
主に日中民間非営利の環境協力の機会を通して、近年の中国の環境NGO活動の発展について、「緑色選択連盟」、気候変動に関する全国規模のネットワーク、河南省と雲南省の団体などを通して把握に努めた。また、日中を含む民間非営利の国際環境協力を進めた経験がある団体の活動に参加し、日中協力の位置づけを確認した。 「緑色選択連盟」は、消費者・企業・投資家に対し、経済活動において環境汚染防止に配慮した選択を求める、中国最大規模の環境NGOネットワークである。当初は消費者の消費活動、次いで長らく企業の調達(サプライチェーン管理)に力を入れてきたが、近年の大気汚染の一因であるセメント産業などの素材産業にはサプライチェーンがないことから、投資家や金融に対する働きかけが新たな課題として浮上してきた。 気候変動については、エネルギー政策全体がNGO活動を含む市民活動になじみにくい国情から、大都市よりも農村部や地方都市で地域密着型の活動をしている団体の方が、具体的な成果を上げやすいようである。後者の典型例が雲南省麗江市に所在し活動している雲南エコネットである。雲南省では貧困対策を兼ねてバイオガスタンクの農家への設置が行政によって進められているが、設置後の使い方などが当の農家に住む人々に十分に理解されていないため、放置されていたり、十分には活用されていなかったりしている。雲南エコネットでは、この使い方を教えてまわることで、薪炭の伐採や有機物による汚染を軽減するとともに、化石燃料の消費も抑制して気候変動対策にもなっている。 河南省では淮河衛士という10年前に地元の水汚染による健康被害を告発した団体が、今ではかつて敵対した汚染企業と協力して汚染のモニタリングをしている。ただし地方行政とは依然、緊張関係にある。 民間非営利の日中環境協力は沈滞気味だが、その原因は2012年以降の国家関係悪化だけではない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は研究代表者が1人で遂行しているため、研究代表者が直面する状況がそのまま進捗に影響する。もともとの計画では研究課題の準備期間に集約的なサーベイの成果をまとめる予定だったが、2013年に入ってすぐ中国の大気汚染をはじめとする環境状況に対する注目が高まり、研究期間開始を挟んで半年ほど、研究代表者にも報道関係者などからの問い合わせが相次ぎ、その一部には対応も求められた。それらに追われ準備も十分にはできないうちに、主要な研究対象である中国環境NGOや日中環境協力に関するイベントが開かれ、それらの機会を逃すまいとしたことで、場当たり的に目前の課題からこなしていく状態に陥った。そのため、基礎的な資料の収集や資材の調達など準備も不十分で、私物も含め、手元にすでにあるものや手近で入手可能なものでの応急的な間に合わせによる綱渡りが続いている。現地調査の機会も複数回あったものの、何れも日程に余裕がなかったため、本来なら現地で入手可能だったはずの定期刊行物を含む資料もほとんど入手できていない。さらに計画時に考慮に入れていなかった家庭の事情なども加わって、今に至るまで当初計画していた準備段階および初期段階で解消しておくべき課題の大きな部分がなお残っている状態である。もとより、「9.研究実績の概要」に記したとおり、場当たり的な対応によっても着実に成果は得られているが、それぞれが全体に対して持つ意味、位置づけや相互関係などについての整理は十分にできているとはいえず今後の課題になっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画の前半部は体系的かつ段階的に順序良く進めていくものであったが、多分に硬直的でもある。今後もそれを理想として可能な限りフォローアップしつつ、既にそれにこだわらずに逃すまいとした機会に得てきた成果も多々あるのだから、その再整理、さらに両者を接合し、昨年度遅れが生じた原因も加味して、より現実的な新たな計画の策定も並行して進めていく。具体的には、中国の環境問題、非営利組織、国際協力、日中関係に加え中国経済についての先行研究サーベイ、公衆環境研究センターのレポートに加え「緑色選択連盟」参加団体についてのネット情報の収集、昨年度の調査の未整理部分の整理、間に合わせになっている資料・資材の収集・調達を強く意識して大幅に加速する。また、8・9月のうちにまとまった日数、中国に滞在できるようにし、いくつかの環境NGOを訪問するとともに、基礎的な定期刊行物を含む資料も入手してくる。当初の計画の後半部はかなり幅のある対応の余地を残しているため、なるべく早い段階で昨年度の遅れを挽回するのが理想としても、新たな課題が生起した場合などは柔軟に対応していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
「11.現在までの達成度」に記した事情により、研究資材の調達や資料の収集が十分にできなかった。綱渡り状態とはいえ、私物も含め手元にあるか手近に入手できたもので応急的な間に合わせができてきてしまってきたこと自体、腰を据えて資材の調達や資料の収集をしないで済ませる原因になってきたこともあるかもしれない。また、他プロジェクトによるイベントなどの機会を最大限活用したこともあって、人件費や謝金が必要になる場面がなかった。当初の計画では新年に入ってから実施するつもりでいた調査が家庭の事情で実施できなかった影響により、旅費使用も計画を下回った。 今年度前半には本格的に資材の調達と資料の収集を実施する。調査旅行も今後実施するものについては計画段階で可能な限り資料収集のための日程を組み込み、旅程としても十分な見聞が得られるものにする。自前で行う調査旅行では当然、人件費や謝金が必要になる場面もありえよう。昨年度、予算が余った原因の大半は、これらが十分でなかったことによるため、それらを十分にすることによって大部分は解消すると考えられる。
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