2015年度に入り、中国の環境NGOを取り巻く状況が、実は前年後半から再び悪化傾向にあることを示す情報が相次いで伝わってくるようになった。いくつかの環境NGOは突然、官憲の立ち入り調査を受けた。環境NGOに共産党支部の設置が義務付けられた(どの程度の「義務」かについては、かなり幅のある異なった理解が存在し、明確ではない)。海外からの環境NGO活動を規制する立法が進められている(2016年4月に制定された)。他方で、2014年度時点では関連条項を含む法改正はあったものの未執行のため、環境NGOにどの程度まで門戸が開かれるか懸念されていた公益訴訟については、最高人民法院によってかなり大きく門戸を開く司法解釈が示されたことが助力となり、環境NGOによる提訴が年間で40数件も受理されるに至るなど、好転・改善の動きもある。政治経済情勢そのものに一進一退あることからすれば、環境NGOを取り巻く状況もまた例外ではないのだろう。 環境NGO側の活動では、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)の融資時における環境条件への政策提言など対外投資のグリーン化に向けた動きと、1990年代生まれの若い世代が運営する環境NGOによる既に汚染排出活動は取りやめられ加害者も撤退した地域に汚染と住民への健康被害が残されている問題への取り組みが、中国国内の動向としてはもちろん、日本との民間非営利協力の観点からも注目される。官民の対外投融資に伴う環境破壊の抑制を目指す働きかけ、環境汚染の影響を受けた地域の再生のいずれについても、日本の民間非営利部門には経験が蓄積されている。ただし、今のところ中国側でこうした課題が浮上していること自体が日本側で十分に広く知られていないこと、日本側にあまり余力がないことなどから、単発的・一時的な交流は別として、これらの分野での本格的な協力は今後の課題になっている。
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