研究課題/領域番号 |
25340150
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
竹宮 惠子 京都精華大学, マンガ学部, 教授 (80330033)
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研究分担者 |
松田 毅 神戸大学, その他の研究科, 教授 (70222304)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リスク・コミュニケーション / アスベスト / アクション・リサーチ / マンガ機能 / マンガ言語 / 機能マンガ教育 |
研究実績の概要 |
1.アクション・リサーチの実施:昨年度作成した、ブックレット『マンガで読む 震災とアスベスト』を用い、震災後のアスベストリスクに関するコミュニケーションのアクション・リサーチを行った。幾つかの団体と連携し、9月に盛岡市でパネル展示、ブックレット配布、セミナー・講演会を現地報告者も交えて行い、阪神淡路と東日本の二つの大震災に関わる問題認識の共有をはかると同時に、特に、東日本大震災直後のリスク認識の実情を、市民、ボランティアなど、現場の関係者から知る機会となり、この問題に関する研究課題も確認した。 2.冊子「震災とアスベスト」の中・韓国語訳制作:1のアクションリサーチの結果をふまえ、同様のリスクが懸念されるアジア地域への情宣と啓蒙を目的としてWebでの発信を検討、まずは中国語版・韓国語版を制作・配信した。将来的には欧米向けにアスベストによる普遍的リスクをテーマに英文版の制作・配信を検討している。 3.機能マンガ─言語機能調査:マンガの言語機能に対し、1950年以降、5年ごとに時代区分し、過去のマンガ誌(京都国際マンガミュージアム所蔵)を渉猟し、マンガ言語をキャプチャして、その言語的な変容と発展を図表にしてデータ化し、整理・体系化してマンガの言語機能を明らかにするための基礎研究を行った。現在、キャプチャ作業が終了し、図表化、データベース化の方法を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題である「社会合意形成を実現するマンガの機能構築」において、東日本大震災におけるアスベスト・リスクをテーマに、ブックレット『震災とアスベスト』を制作し、それを基盤として様々なアクションリサーチを実施することができた。 震災直後のアスベストリスクに関してはいぜん社会的に認識が共有されているとは言えない一方、震災時のアスベストによる健康リスクの問題に関する、神戸市での市民向けアンケート(NPO法人ひょうご労働安全衛生センター、立命館大学アスベスト研究会と共同で実施し、3万枚配布、2600以上の回答)が示しているように、健康リスクに関する不安も根強い。 こうしたアクションリサーチの結果や展望を踏まえて、リスク・コミュニケーションにおけるマンガの機能を彫琢するとともに、その機能を再認し、新たな機能構築に向けた取り組みを行うことが可能となった。 また、実践的なマンガ教育を試行するなかで、マンガの新しいジャンルを拓く有用な手掛かりを見出し、留学生の知見とスキルを活用して国際的な発信をも実現した。
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今後の研究の推進方策 |
1.アクション・リサーチの拡大と深耕 アスベスト・リスクに関するアクション・リサーチの研究分野においては、平成26年度までの実績を踏まえて、メディアでも頻繁に取り上げられている東南海(トラフ)地震に関連する地域でのリスク「警告」の観点からのアクション・リサーチを展開する。「クロスロード」(意思決定ゲーム)をモデルに地域住民、行政担当者、関連業者向けのリスク・コミュニケーションツールの開発を通した研究を行う。 2.マンガの機能構築 平成26年度に行ったマンガの言語機能調査のデータ化とデータベースの構築を目指す。これによって、マンガ言語を確立するとともに、マンガ機能教育での活用を促し、社会合意形成に貢献しうるマンガの機能を構築・提示する。 3.マンガ機能教育 平成26年度後期に本学に新たに開講された授業「マンガ研究演習4」において、機能マンガに特化した授業を本格的に展開。京都府・医療企画課の協力(委託)の下、実践的な漫画制作をカリキュラムで試行し、そこで必要なマンガの機能および手順を確認・検証しながら、機能マンガの教育の可能性を模索するとともに、「機能マンガの教育手法(機能マンガの継承・伸展のための方法論)」の確立に向けた取り組みを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
機能マンガのデータ整理およびデータベース作成に着手する予定であったが、過去のマンガの渉猟およびキャプチャに思いのほか時間を要したため、実作業に着手するまでは至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
機能マンガのデータ整理およびデータベース化をはかる。
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