前年度までに、自立的管理にとって不可欠な、CBOメンバーと住民の間での信頼関係の構築にとって、社会への信頼性、利他性といった社会関係資本が関連していることが見出されたことを受け、今年度は、バングラデシュ沿岸域で地下水塩水化の影響を受けている2つの農村コミュニティならびに2つの都市スラムにおいても同様の調査を実施した。また、開発援助活動を実施しているローカルNGOの参加のもと、自立的管理の成立に必要な要件について議論した。 今年度行った調査対象農村コミュニティの社会関係資本レベルは、前年度調査対象とした自立的管理に失敗しているコミュニティに近い。ひとつの事例では、払い能力に応じて利用する水供給施設が異なる。もうひとつの事例では、比較的良好なため池を水源とする3つの砂ろ過装置が存在するが、CBOは存在せず、維持管理は学校、NGOに依存している。こうした事例から、水供給のためのコミュニティ施設の管理と利用を通じて、社会関係資本を高めていくことが、コミュニティ施設の自立的管理に求められることが示唆された。 調査対象とした2つの都市スラムでは、最近、共同トイレが更新されたが、トイレの清潔さにおいて顕著な違いがある。社会関係資本に関わる質問への回答から、トイレの清潔さ維持と社会関係資本のレベルとの間に関連性が見られた。また、トイレが清潔に使われているスラムで、生活行動と下痢症リスクの関係に関する研究成果をもとに、衛生に関わる行動変化を促すワークショップを行った結果、手洗い行動、母親からこどもへの注意において、衛生に関わる行動の改善がみられ、飲料水等を保管する場所の改善も観察された。 NGOとの議論からは、CBOの自立性は求めつつ、コミュニティ単位の分散的な管理だけではなく、地域レベルで、管理を専門に担う人材の投入の必要性が指摘された。
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