研究実績の概要 |
[臨地調査(継続)] デザインの現れである事例の基礎資料「写真日記」の作成を,函館(北海道),伊是名島(沖縄県),代官山(東京都),館山(千葉県),Victoria(Canada), Bern(Switzerland)等を調査フィールドとし,実施した. [法則的関係の分析(継続)] 「写真日記」の「事実記述(写真撮影された客観的事実の記述)」,「経験記述(写真撮影に至る写真日記作成者の主観的空間体験の記述)」,「解釈記述(記述した事実と空間体験の結びつき方についての写真日記作成者が信じるものごとの記述)」のそれぞれにおける文の文法構造,意味構造,単語の出現頻度や共起関係に基づいて,写真日記の対象となった空間の特徴,三種の記述の特徴,記述間の関係を分析し,実体と記号とを結びつける法則的な構造を考察した.その結果,次の仮説を建てるに至った.<仮説1>事実記述における実体と記号の結びつきは写真日記作成者の属する言語共同体の慣習を反映し,そこには作成者もしくは言語共同体における存在論が潜在する.<仮説2>客観的な事実の記述と主観的な空間体験の記述を結びつけるものごとには,自然科学や認知科学における知見に基づく客観的な法則の範疇に入るものごと,身体と環境との関係を捉える心的構造「空間図式」として半客観的半主観的に記述できるものごと,作成者以外には理解しがたいものごとがある. [デザインに関わる言語表現と実体や概念との関係を定義する理論的モデルの構築] 写真日記の写真(実体の写し)と記述(実体や概念の言語表現)の法則的関係の分析および考察の結果,言語の統語論,意味論,語用論の関係,デザイン・プロセス・モデルにおける構造,振舞,機能,状況,経験の関係,および,構成的方法論を関連づける仮説的モデルを構築し,当該モデルがデザインを対象とする科学の方法論の核となる可能性を探究する思考実験を行った.
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