本研究では、工業製品の意匠デザインに活用可能なコンセプトモデルと呼ぶ感性的知識を、概念の階層構造を持った言語知識と定義し、このコンセプトモデルの獲得手法、すなわち形状の物理的特徴からなる下位の概念階層から、感性的イメージからなる上位の概念に上昇させるためのユーザーインタフェースを提案することを目的とした。 これまで、様々な物理的特徴情報を一般的な感性イメージ語で表現するための研究を行ってきたが、実際に構築した対話型デザイン獲得支援システムによって生成されたデザインにおける試みでは、非言語的であったり、複数のイメージを併せ持つ複雑な感性的イメージである場合、現段階の構成では対応が困難な場合がある事が分かった。 そこで本研究では、コンセプトモデルを検討する上で必須となる、デザインに関する各種経験則、例えば色彩・配色や構成に関する知識を数理的に活用した上で、デザインの感性的イメージの度合を求める感性的イメージ語に調整するための手法の提案を目指すこととした。前年度まででは、配色を調整することで感性的印象を調整する手法を提案したが、研究最終年度では、これに加えて、デザインの周囲に基本図形を新たに付加する装飾を行う対話型装飾デザイン支援システムを構築した。システムはデザイン構成に関する一般的な経験則を考慮しており更に利用者自身の主観を反映した装飾デザインを生成でき、有用性を示した。 本研究により、(1)コンセプトモデル検討の元となる意匠デザインの対話的な生成、(2)その一般的印象の定量化、更に(3)色彩の変更や装飾付与による感性的印象の調整といった、新たなデザイン支援の枠組みを示した。これにより、感性的印象を調整するという視点から、より現実的に活用可能な方法でコンセプトモデルの獲得を可能とする事が示唆される。
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