研究課題/領域番号 |
25350012
|
研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
川角 典弘 和歌山大学, システム工学部, 講師 (30252547)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | デザイン討論 / デジタルメディア / ワークショップ / AR / 地域活性化 |
研究実績の概要 |
昨年度に導入した大型タッチディスプレイを利用したデザイン討論環境を学生によるデザイン討論と教育実践を行い、事例の積み上げと討論スキルのノウハウ収集を行った。特にITを活用した地域活性化プロジェクトとして、インスタレーションアートに着目し、デジタルコンテンツとセンサーデバイスを組み合わせた市民参加型ツールの開発と実践(岸和田市におけるまちおこし事業)に取り組んだ。 また本年度は、写真画像およびCADによるドローイング、CGレンダリングイメージなどを平面的なピンナップボード形式で表示するディスプレイ参照型の討論に加えて、タブレット端末を利用したAugumented Reality技術の導入に取り組んだ。プロジェクタあるいはディスプレイを利用した従来の討論環境では、討論参加者が複数であっても、同一の視点で対象(施設や地域の3次元モデル)を見ることになり、参加人数の増加に十分対応できなかった。ARとタブレットを導入した多人数で行われるワークショップ形式の討論は、参加者個人がタブレット端末から自由に討論対象を参照でき、多視点および同時並行的な検証と討論が可能になることを明らかとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デザイン討論における様々なマテリアル(討論資料)を対面環境でグラフィックファシリテーション技法により、ビジュアルに整理・構造化するピインナップボードシステムの試作、大型ディスプレイを導入したディスカッション環境の整備、センサーデバイスを用いた双方向コンテンツの試作、さらにARとタブレットにより模型や図面をマーカーにデジタルコンテンツを多視点参照する討論技法の検証、と個々の技術検討と問題発見の作業は予定通りに進んでいる。しかし、これらの技術や知見を統合的なシステムとして一体化し、シームレスな運用ができるまで十分なシステム化が進んでいない。また学生以外の討論参加者によるデザイン討論・まちづくり討論の検証が不十分と考えており、デジタル技術に対するリテラシーの有無や多様な考え方や問題意識をもつステークホルダーの意見を上手く集約し、合意形成を行う技法、さらにデジタルメディアに適した手法の検討が必要と思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究最終年度にあたる平成27年度は、デザイン討論の記録やその過程で生成される設計マテリアル(資料)をリポジトリとして保存し、オンライン上で参照可能なデザイン討論プロセスのデータベース化に取り組む。本研究で提案するデザイン討論データベースは、個々に構築されるツール/システム環境からオンラインで参照され、設計履歴を保存する共通のライブラリであり、また市民参加型のまちづくりや学生らが行うデザイン教育の実例を履歴として参照できるように設計する。具体的には、リレーショナル構造をもつカード型データベースツールで立ち上げ、パソコン、タブレット、スマホなどの多彩な機器からビジュアルかつインタラクティブなインターフェースを備えたし仕様とする。 最後にこれらのシステム環境/ツールを使ったデザイン討論実験を行い、その機能や役割を検証することで本研究の成果とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度に導入したARによる討論支援ツールは、HMDやタブレットによるナビゲーションデバイスの導入が不可欠となるが、当初購入を予定していたHMDデバイスが、性能および仕様を評価・検討したところ、本研究で期待している成果が得られないと判断、購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には性能・機能が向上した新製品の販売が予定されており、デザイン討論支援および設計プロセスのリポジトリ開発では、これらの新しいデバイスの導入とデザイン討論実験への参加協力者への謝金などに充てる予定である。
|