本研究では、デジタルメディアを活用したワークショップ討論支援を目的とした支援モデルの検討とシステム開発を行った。特に地域の問題解決やまちづくりにおいては、非専門家を含む多くの知見を集約し、多角的な視点でデザイン検討を行うことが重要である。またデジタルメディアを活用することで、ビジュアルに空間を体験でき、初心者や未経験者でもわかりやすく設計対象を理解するサポートを目指した。 本年度の研究実績として、これまでに積み上げを行ってきたデザインプロジェクトの討論過程の分析と事例考察から、システム開発モデルを提案、デザイン討論初期段階での討論履歴アーカイブの構築とAR/VRモデルを活用した多人数参加・多視点によるインタラクティブな仮想空間体験ツールの開発を行った。 討論履歴アーカイブは、デザイン討論の初めに抽出される様々なアイデアリソース(スケッチ、メモ、画像イメージ、ドローイングファイルなど)をネットワーク経由で蓄積・共有するwebデータベースとして開発を行った。デザイン討論ワークショップの参加者は各自のタブレット端末から、写真の撮影、スケッチの作成を行い、キーワードやユーザ情報とともにアーカイブにリソースを保存する。別の参加者は、これらのリソースを相互参照し、コメントや評価を行う。 AR/VRによる空間体験ツールでは、デザイン検討案として作成された画像やモデルのイメージをマーカーを参照することで現実の空間に設置されたように再現・検討を行う機能の他に、他の参加者からのコメントや評価を履歴として蓄積する。これらのシステム環境では、従来のプロジェクタや大型ディスプレイによる単一視点でのデザイン検討に対し、オンサイト(現場)での空間体験と多視点・多人数によるグループ討論支援を実現した。
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