本研究は,非言語の情報として触覚に着目し,圧力変化をつけた渦輪を使った触覚ディスプレイを用いて顔の頬部に触覚フィードバックを行うことで,人の生体情報を制御することを目的とする. 本年度は任意の渦輪の生成精度を高めるための制御パラメータを実験により明らかにし,渦輪制御の方法論を構築した.具体的には2つの筒から発射される渦輪の圧力差,片側の筒の角度を制御すれば任意の渦輪を作成可能であることを実験により明らかにした.これにより渦輪を用いた触覚ディスプレイの制御が可能であることが明らかになった. また,渦輪が頬にあたることで得られる触覚の感覚で強い渦輪,弱い渦輪を定量評価により決定し生体情報制御の評価実験のパラメータとして利用した.実験により,空気圧を変えた空気玉を人の顔面にあてることで,自律神経系・中枢神経・認知行動に変化を与える可能性があることが整理できた.具体的には強弱関係なく渦輪をあてることで自律神経系をストレス状態から安定状態に推移できることや弱い渦輪には中枢神経系の脳波の活動が心を鎮める(meditation)の方向に推移することやタスク課題の正答率にも影響があるなどの知見を得ることができた. これらの知見から,非言語情報である触覚の感覚が人間の知覚や認知に影響がある可能性があり,今後実験を続けることで定量的にその影響を評価する指標が創出できるようになる.これらの成果から,能動的に人の生体情報を制御することができれば,触覚情報と人の生体反応の関係性が明らかとなり,抽象的に表現されがちな非言語情報である触覚デザインの理論化が可能になる.
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