研究課題/領域番号 |
25350017
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
廣瀬 信之 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (40467410)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オブジェクト置き換えマスキング / 見落とし / 顔文字・絵文字 / 感情情報 / 時間的ギャップ検出 / チャンネル間処理 |
研究概要 |
本研究課題の目的は,効率的な情報提示に向け,ヒトの見落とし特性を明らかにすることである.当初予定では主に文字通り視覚的な見落としを扱うこととしていたが,さらに広義に聴覚モダリティも含めた情報の見落としをも対象とすることとする.本年度は主に,オブジェクト置き換えマスキングを中心とした注意に関連する見落とし現象,携帯電話メールにおける顔文字・絵文字付加による感情情報の見落とし回避,視覚での時間的ギャップ検出課題におけるギャップ前後の時間マーカーの特徴変化によるギャップ見落としについて検討した.注意性の見落とし現象の特性とその回避方策に関して,本(注意をコントロールする脳-神経注意学からみた情報の選択と統合-,新曜社)の一章を著した.また,喜び,悲しみ,怒り,不安を伝える携帯電話メールのメッセージにおける感情伝達に視覚的手がかり(顔文字と絵文字)が及ぼす影響について調べ,感情の種類によっては視覚的手がかりが伝達される感情を促進し,感情情報の見落とし回避に役立つ可能性を示した.この成果について国内学会(日本心理学会)で発表し,国内学術雑誌(感情心理学研究)に査読論文が受理された.さらに,時間的なギャップの前後で時間マーカーであるGaborパッチの空間周波数を変化させると,空間周波数が同じである場合と比べて,ギャップの検出感度が低下する(すなわちギャップの見落としが生じやすくなる)ことを明らかにした.この成果は,聴覚分野の先行研究で示唆されてきたチャンネル間処理による時間分解能の低下が視覚モダリティにも当てはまる可能性を示すものであり,今後国内外の学会で発表するとともに,視知覚関連の専門誌に投稿する予定である.この他にも,聴覚における時間的ギャップ検出と音声知覚の関連性,聴覚における選択と結果の不一致に対する見落とし(choice blindness)などについて調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視覚的な見落としについては,これまでの成果を本の一章にまとめることができた.さらに,聴覚で示されてきたチャンネル間処理による時間分解能の低下が,視覚における前後の時間マーカーの特徴変化による時間的ギャップの見落としにも当てはまる可能性を示す新たな知見を得ることができた.当初予定よりも見落としの定義を広く捉えて実施した,携帯電話メールにおける顔文字・絵文字の付加による感情情報の見落とし回避に関する研究では,国内学術雑誌への掲載が決まった.これらのことから研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の視覚での時間的ギャップの見落としに関する知見については,チャンネル間処理によるものではなく,他のデータ解釈が可能であるため,問題点をクリアするための実験操作を考案し,検討する必要がある.これと並行して当初予定に沿った実験を実施し,得られた成果を国内外の学会で発表し,学術雑誌に投稿する.
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