研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,効率的な情報提示に向け,ヒトの見落とし特性を明らかにすることである.本年度は,オブジェクト置き換えマスキング(OSM)におけるマスクプレビュー効果,視覚での時間ギャップ検出におけるギャップ前後の時間マーカーの特徴変化によるギャップ見落としについて中心的に検討した.OSMにおけるマスクプレビュー効果とは,マスク刺激をプレビューすることでOSMが大幅に減弱する現象である.先行研究 (Lim & Chua, 2012) ではプレビュー後にターゲットと同時に再呈示されるまで900ミリ秒という長いギャップを挿入してもマスクプレビュー効果が残存し,これはギャップ期間中にマスク表象が視覚性短期記憶に保持されているためと解釈されていた.本年度の実験により,先行知見と異なり,900ミリ秒のギャップ挿入によりマスクプレビュー効果が消失し,再度OSMが生じることが明らかとなった.先行研究との結果の相違に関しては,先行研究ではOSM量を算出するためのベースライン条件が欠如していたためと考えられる.時間ギャップ検出については,ギャップ前後のマーカー刺激の傾きが90°異なる場合の空間周波数変化によるギャップ見落としの影響について調べた.その結果,前年度に実施した傾き差が15°の場合よりも閾値が全体的に上昇したが,ギャップ前後の空間周波数が異なる場合は同じ場合と比べて閾値が上昇する傾向はなおも認められた.この他にも聴覚における無音検出と音声知覚との関連性などについて検討した.
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