研究課題
指宿でのモイドン調査では、市指定文化財のモイドンを対象として、モイドンにおける行事や管理、空間の変容状況をヒアリング調査した。その結果、モイドンにおける行事、管理は簡素化し、門の住民の減少や高齢化などにより、門での管理が困難になってきていることが明らかとなった。また、植物生態的にも竹の侵入や高木化の影響が懸念された。今後は、モイドンなどの伝統的行事の内容や運営の主体などについて検討すべきであると考えられた。奄美大島のカミヤマでは、市街化の進行程度に着目し、複数の集落でノロ祭祀の実施状況および空間構造の認識状況をヒアリング調査した。その結果、ノロ祭祀を独自で実施している集落は極めて限定的であるが、豊年祭などを中心として伝統的な行事が存続している集落が多いことが分かった。しかし、伝統的な空間構造に対する認識は薄れつつあり、祭りも徐々に簡素化しつつ傾向にあることが分かった。モイドン、カミヤマ、ウタキなどの伝統的な地域資源は、いずれも地域の自然生態インフラとして機能していることを確認した。しかし、市街化の進行やライフスタイルの変化などにより、地域の民間信仰に対する住民意識が変化するにともなって、伝統的な地域資源とそれに関わる祭りなどの継承が困難になってきている。中でも、コミュニティの最小単位である門などで実施される祭りは、それより大きなまとまりである集落単位で実施される祭りに比して、継承していくことがより困難になってきている状況にある。したがって、今後、伝統的な地域資源を健全に保全・継承していくためには、地域の拠り所となる祭祀空間のマネジメントあり方を探ることが重要であると再認識された。