研究課題/領域番号 |
25350025
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
高橋 雄三 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (30326425)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人間工学 / ユニバーサルデザイン / ヒューマンセンタードデザイン / 身体負担 |
研究実績の概要 |
立位で精密部品組み付け作業を行うためには,作業内容に応じて,腰部がある程度回転する必要がある.しかし,従来の立位作業用補助椅子などは座面や背もたれ部が体重を支えるために固定されており,作業内容に応じた腰部の回転運動を妨げる構造となっている.そこで,本研究では,作業内容に応じた腰部の回転運動を支援する機構を備えた立位作業用補助椅子開発のための基礎的検討を行うことを目的とする. 平成26年度までの検討で,一連続立位時間が10分以下の条件では,上体の荷重を支える支援よりも,作業動作のために発生させたトルクの余剰分による作業姿勢の不安定化を防ぐ支援の方が有効である可能性が示唆された.そこで,平成27年度は,立位作業補助椅子に求められる腰部の回転量について,(1)精密部品組み付け作業時に求められる腰部の回転量の定量化を行い,立位作業用補助椅子に求められる設計仕様(回転速度,回転範囲など)を策定した.併せて,立位作業用補助椅子使用時の身体からの荷重方向などを検討するために,(2)静立位時・注視対象運動時の身体各部の運動軸の時系列変化について検討した.さらに,実機による効果測定の際に問題となる不随意性の動作の問題を排除するため,(3)随意筋収縮時の筋電位反応の特徴解析を行った. 各段階での解析の結果,精密部品組み付け時や運動する対象物の注視時,静立位維持時に求められる腰部の回転運動量には大きな違いはなく,また,腰部の回転速度は作業内容に依存する可能性が示唆された.そこで,ある範囲内での回転量を特定の回転速度以下で計測できる計測装置を検討し,当該装置を立位作業補助椅子の背もたれ部に固定し,作業者の腰部に密着させることで,大きな荷重を支えることなく,下肢へ伝播される,作業遂行のために発生した関節トルクの残量を,体外に逃がすことができる機構を検討・設計した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年度までの成果から,本研究の狙いとする「腰部の回転運動を抑制しない」立位作業用補助椅子に求められる機能として,一連続立位時間が10分以下であれば,上体の荷重を支えるという椅子本来の機能よりも,作業動作のために発生させたトルクの余剰分に起因する作業姿勢の不安定化を抑制する機能が重要である可能性が示唆された.そこで,平成27年度は肩部や腰背部で発生したトルクを姿勢維持のために下肢へ逃がさず,腰部の回転運動によって体外へ逃がす機構の検討を中心に行った. また,実用化を踏まえて,静立位時,運動する視対象注視条件での設計仕様についても検討した.その結果,設計仕様(腰部の回転速度や回転範囲など)の同定に時間がかかり,加えて,設計仕様を満たす機構を持った計測装置の仕様確定に時間を要したことが,研究進捗の遅れの原因であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度末までに設計仕様をまとめ,現在までに,本研究の効果を測定するための仕様を具現化する機構についても概ね設計は完了した.懸案事項としては,腰部の回転量を測定するセンサが現仕様では一箇所しかなく,作業動作に起因して体幹軸が背もたれ部に対して左右に動いた場合,腰背部が背もたれ部から離反してしまう可能性が高い点である.今後は,設計を固めた上で発注業者に制作を依頼し,実機をもとに数度の設計仕様を変更・拡充を加え,腰部の回転運動を抑制しない立位作業用補助椅子の実機を制作し,その効果測定を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的を達成するための実機制作の仕様策定に於いて,(1)腰部の回転速度・回転量を測定する機構の開発に時間を要したこと,(2)本研究の成果の実用化を踏まえて,本研究で対象とした微細部品組み付け作業に加えて,静立位での条件や運動する視対象を注視する条件も検討に加えたことにより,実機の設計に時間を要した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度末までに実機の概ねの設計は終了しており,今後は,設計仕様に基づいて業者に実機の制作を発注し,平成27年度に生じた設計変更やセンサの拡充を経て,効果測定を実施する.
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