研究実績の概要 |
本研究は、25年間の参画型による景観形成の取り組み「清水港・みなと色彩計画」をPCM(Project Cycle Management)手法を援用し,その実践過程を分析,主体的、持続的な地域づくりに結びつくことを実証することを目的としている。 研究内容は,1.景観を構成する957件(185事業者)の個別事例をデジタルデータ化しデータベース作成2.個別事例を当該計画地図にプロット,25年間の蓄積による景観形成の波及効果を検証し課題の抽出3.プロジェクト期間の設定、便益の考え方,コスト負担の方法、リスクの明確化と対応方策等を明らかにし,個別の塗り替え等の事象をサブプロジェクトとして詳細に分析・評価,プロジェクトサイクルを設定する。 研究結果としては,PCMは,地域ニーズ調査による計画立案時期(H3),1期目は維持管理に合わせた景観整除,法規制の見直し,事業者の維持管理計画への浸透期間(H4-H11),2期目は市民に開放されたみなとまちづくり機運の熟成による新計画策定,市景観重点地区制定等の(H12 –H18),3期目は世界遺産富士山登録等による世界に誇れるみなとまちづくりとしての発展期(H19-H26 )であることが解明された。また,条例も補助制度もない計画が,実効性のある継続的な取組になった理由として1.計画段階から地域住民や事業者の意向を把握し,それらを適切に反映させフィードバックできるようなシステムづくり2.事業者の独自性や個性を十分に活かす3.地域の精神的一体感を醸成するシンボルカラーによる景観の高質化4.地域条件、特性から適切なランドマークの選定とその実現は「景観美」に対するインパクトを地域に与え事業者の美意識を啓発する5. 視点場の確保と色彩の空間的配置や秩序と調和のある配色計画やデザインによる地域景観への共有財産意識の熟成が継続するための重要な要件である。
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